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株式会社MIJ labo

鹿野 淳さん

#37「十勝発の世界基準を目指す〜牛肉の客観的肉質評価法のグローバル展開~」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

独自開発のカメラデバイスで牛の枝肉の断面を撮影・解析し、肉質評価や育種改良に有効なデータを提供する、帯広畜産大学発ベンチャー企業の株式会社MIJ labo(エムアイジェイ ラボ)代表取締役の鹿野さんにお話を伺いました!

株式会社MIJ labo 鹿野 淳さん

プロフィール
鹿野 淳さん(かの あつし) 代表取締役

1957年生まれ、山口県岩国市出身。東京農業大学卒業後、兼松エレクトロニクス入社。北海道・東北担当、取締役を経て、1998年兼松エレクトロニクス子会社のケー・イー・エルシステムズ代表取締役に就任(2016年3月退職)。2014年一般社団法人ミート・イメージ ジャパン理事、2018年株式会社MIJ labo代表取締役就任。

人間の医療技術を応用し、畜産分野で新ビジネス創出


―――株式会社MIJ laboは2018年に創業し、同社事業に関連する研究開発を担う一般社団法人ミート・イメージ ジャパン(以下、MIJ)は2014 年に創業しています。まずは、どのように事業がスタートしたのかを教えてください。

(鹿野さん)前職時代、人間向けの医療の取り組みで、CTやMRIなどの画像を元に診断する「読影」のサービスを北海道内で展開しており、その頃から十勝にも度々来ていて、北海道大学や帯広畜産大学(畜大)との繋がりがありました。当時はMRIで撮影した人間の体の断面画像を活用した内臓脂肪や脂肪肝の診断システムを提供していましたが、それを牛の枝肉にも応用できるのではないかと考えたことが事業を始めたきっかけです。
畜大では口田圭吾教授(MIJ Labo.CDO、ミート・イメージ ジャパン副理事長)が牛の枝肉の画像解析の研究をしていましたが、当時はまだデータ転送の回線容量が少なく、解析した画像を送る技術が無いことが課題でした。解析するためには粗い画像では難しく、必然的に画素数が多くなり、データ容量もかさみます。そこで、仮想技術を利用して画像を送る方法の検討を重ね、MRI、画像転送、画像解析・評価の技術を組み合わせて事業を組み立てました。
そして、まずは牛の枝肉断面を撮影するためのカメラデバイスの研究開発と、肉質の評価技術に関する研究を行う一般社団法人ミート・イメージ ジャパンを2014年に立ち上げました。

―――MIJを立ち上げた後、2018年に畜大発ベンチャーMIJ laboが立ち上がりました。それぞれの役割について聞かせてください。

(鹿野さん)MIJは、カメラや肉質評価に関わる研究開発が主な事業です。MIJ laboは、それらの技術を活用した事業展開を行う会社です。畜産クラウド・枝肉データベースサービスを提供し、海外への展開もおこなっています。


ニッチすぎて競合がいない!?特異点は独自技術の組合せ!


―――枝肉断面を撮影して得られた画像を解析して、どんなことがわかるのでしょうか?

(鹿野さん)ロース芯面積、BMS(Beef Marbling Score)と呼ばれる脂肪交雑の程度、肉の色沢や脂肪の色沢などがわかります。そのデータを元に、牛肉の格付けなどの肉質評価ができるシステムを構築し、提供しています。

―――技術の特異点について、教えてください。

(鹿野さん)当社で独自開発しているカメラデバイスと、解析システムの、それぞれが精度の高い独自開発技術であることが特異点の1つです。
 もう1つは、独自技術である枝肉解析データを含んだ畜産情報の統合的なデータベースサービスを提供していることです。従来のトレーサビリティシステムの情報、血統情報や給餌、病歴などの情報と、枝肉解析のデータが統合され、生産から流通販売まで活用できるデータベースです。解析技術とデータベースの組み合わせはニッチすぎるのか、他に類を見ず、競合がいません。開発初期からアップデートを重ね、カメラデバイスの小型化やアプリ化を進めています。

―――収益モデルと、顧客について教えてください。

(鹿野さん)カメラデバイスの販売、撮影データ解析システム利用料が主な収益源です。その他、受託開発や共同研究もおこなっています。顧客は国によって様々ですが、牛肉の格付け機関や、ミートパッカー(家畜の飼育、と殺、解体、加工、流通に携わる事業者)、メーカー等が主な顧客です。大手企業からも引き合いがあり、海外においても国の機関への導入が進んでいます。

立ち上げ当初から取り組んだ海外展開は、10カ国以上!


―――十勝の企業の中でも、海外展開数がダントツに多いのではと思います。海外展開に積極的な理由を教えてください。

(鹿野さん)2023年8月現在、オーストラリア、アメリカ、カナダ、メキシコ、ウルグアイを中心とした南米諸国、南アフリカ、スペイン、イギリス、ドイツ、オーストリア、ベトナム、韓国等の10数カ国に展開しています。牛枝肉の画像解析を行い、データベースサービスを提供するという、そもそもニッチな事業であるため日本だけでは事業が成立しないと考え、事業立ち上げ当初から、海外への展開に取り組んでいます。

―――ローカルビジネスであってもグローバル環境の影響を受け、自社でコントロールできない要因に左右されることが多々あります。自ら海外展開することで情報を得やすいなどのメリットはありませんか?

(鹿野さん)それはあります。自社が各国に展開することでグローバルな流れを掴むことができ、それによって事業戦略が立てやすくなり、スピーディーな対応も可能となります。国ごとの状況なども比較できるため、どこがビジネス面で進んでいるのかなどもわかり、先行投資の判断なども行いやすいと思います。

―――国内での展開はどのような状況でしょうか?

(鹿野さん)福島、岩手、茨城、島根、青森、東京、兵庫などで既に展開されており、今後群馬、宮城、宮崎からの問い合わせがあり、これから展開が予定されています。

―――2018年の立ち上げから約5年、事業領域は順調に拡大しているように見えます。体制面ではどのような構想をお持ちですか?

(鹿野さん)2023年から外国人スタッフを雇用し、更に海外展開を進めています。現在は代理店を通じた海外展開も行っていますが、代理店を闇雲に増やすのではなく、当社との関係性や展開先顧客との関係性を大事にしているので、当社の人材を育成する視点を重視しています。

肉質評価の世界基準になる日も遠くない!


―――MIJ laboの展開するサービスが、牛肉の肉質評価のグローバルスタンダードになる日もそう遠くないのではないでしょうか。どんな構想を持っていますか?

(鹿野さん)MIJ立ち上げから9年、MIJ laboは5年、枝肉解析データはどんどん蓄積されて既に数十万頭分になっています。これは世界でも一番の規模ではと思っています。これからは、蓄積データの活用も進めていきます。
 国内牛肉市場も、和牛や交雑種、ホルスタイン種など、肉質や特徴、価格も大きく異なります。嗜好の異なるユーザーに対応し、好みの牛肉を提供できる環境づくりに貢献する取り組みを進めていきたいと考えています。今後はデータベースの更なる充実化を進めていきます。その他、肉質の客観的な評価システムの無い「豚肉」についても、牛肉と同様の取り組みを構想しています。
一次産業の収益向上にデータベースサービスが役に立てると思いますし、まずは一次産業が盛んな十勝から、個々の生産者さんの収益向上に繋がるような取り組みを進めていきたいと考えています。

2023年現在、唯一の畜大発ベンチャーとして、地域産業に根ざしながら世界展開を進めているMIJ labo。人間向けの医療技術を畜産へ応用するという発想が事業のきっかけということに、LANDスタッフも非常に刺激と影響を受けました。これからも、MIJ laboさん、ミート・イメージ ジャパンさんの取り組みを、LANDは応援します!!

リンク

株式会社MIJ labo
一般社団法人ミート・イメージ ジャパン
平成30年度 アーリーステージ事業者支援助成金 採択時の記事


協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


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