北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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株式会社プロコム北海道

関向 樹志さん

#36 「デザインの力で地域の産業発展・付加価値向上に取り組むクリエイティブカンパニー」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

今回は、デザインの力と多角的な事業展開で地域の価値を高め、十勝地域を盛り上げる株式会社プロコム北海道の関向さんにお話を伺いました!

株式会社プロコム北海道 関向 樹志さん

プロフィール
関向 樹志さん(せきむかい たつし) 代表取締役

恵庭市出身。北海商科大学卒。札幌本社の広告代理店(帯広支社)で10年間営業を担当。2009年、38歳で独立し、帯広市にて株式会社プロコム北海道を設立。その後、2013年に札幌オフィスを開設し、2023年1月にレンタルキッチンスタジオ「とかちショクテラス」を開設。デザインの力を活用し、地域の付加価値を高めるための取り組みを積極的に行っている。

デザインを中心に、広告代理業を行うクリエイティブカンパニー


―――関向さんは38歳で独立し、2009年2月に帯広市を拠点としてプロコム北海道を設立されましたが、独立を決めたきっかけや、なぜ帯広市を拠点としたのか教えていただけますでしょうか?

(関向さん)前職では広告代理店で働いていましたが、38歳の時に独立するかどうか考える状況に至りました。別の会社に転職する選択肢もありましたが、それよりも自分自身のスキルを磨き、自分の理想を形にしたいという想いがあり、もちろん独立にはリスクが伴うことも承知していましたが、チャレンジしてみようと決意し独立することを決めました。
帯広市を拠点に選んだ理由は、私は十勝地方がとても好きだったからです。過去の転勤で北海道内のいくつかの地域を経験しましたが、十勝が最も心に残っていました。前職から引き続き応援していただけるクライアントも多く、また、学生時代の友人が帯広に戻ってきており、独立する際にはその友人からも多大な協力をいただきました。このような背景があり、帯広市を会社の拠点とすることに決めました。


―――御社には営業、企画、制作などの部門があるとのことですが、具体的にどのようなスキルを持ったスタッフが在籍しているのでしょうか?

(関向さん)当社には4つの主要な部署があります。まず、フロントマンとしてクライアントへのアカウントを担当するビジネスプロデュース部があり、次に、広告やデザインの企画、プロジェクトの計画、実行、管理、動画制作、ホームページの設計などを担当するクリエイティブ部があります。そして、それらの企画を具現化する役割を果たすデザイン部があります。さらに、総務や経営に関する業務を担当する経営企画室も存在します。
グループ会社を除き当社単体で見ると、社員は合計で18人在籍しています。各部署には、プランナー、コピーライター、アートディレクター、デザイナー、イラストレーターといった多様なスキルを持ったスタッフが在籍しており、それぞれが専門的な知識とスキルを活かして、企画から制作までをトータルプロデュースしています。

プロコム北海道のメンバー


―――これまでデザインを中心に数多くの案件を手がけていますが、具体的にどのような依頼が多いのでしょうか?

(関向さん)商品や企業のブランディング、パッケージデザインが一番多い依頼です。当社の設立当初は、6次産業化の必要性が叫ばれており、商品にいかに付加価値をつけるかということが注目されていました。そのため、パッケージデザインを依頼する企業が増えていたのですが、十勝地域ではパッケージデザインに特化したデザイン会社は少なく、多くの案件が札幌や東京などの地域外に流れている状況でした。当時、「デザインだけで生計を立てられるのか?」と疑問に思う人が地域には多かったという事情もあって、そのような会社が少なかったのかもしれませんね。
そんな状況の中で、私たちの会社はパッケージデザインに特に力を入れていたので、地域内の多くのお客様から依頼を受けることができました。そして、札幌や東京の企業に依頼するよりも、地元十勝の企業である私たちに依頼することで、クオリティが落ちるという先入観を払拭するためにも、自社の研修と人材育成に力を入れました。それは今でも続けています。

これまで受けた案件の実績の一部



―――御社は多くの制作物で地域に貢献していますが、顧客との関係性において特に重視している点はどのような点でしょうか?また、そのために、社員の皆さんはどのような意識を持って取り組んでいるのでしょうか?

(関向さん)私たちプロコム北海道では「ファンを作る」ことに特に力を入れています。一般的には新規顧客獲得が重要だとされていますが、それも確かに大切です。ただ、私たちの哲学としては、私たちのクリエイティブや仕事に対する姿勢を好きになってもらい、末長くお付き合いできる関係づくりを目指していきたいと考えています。
そのためには、まず私たち自身が自社の価値をしっかりと理解する必要があります。何が私たちの強みなのか、どこが評価されているのか。これを理解することが、お客様にもその価値をしっかりと伝えられる第一歩だと考えています。なので、社員1人ひとりが自社に愛着を持ち、その魅力を理解している必要があるんです。
この理念を共有するために、社内での意見交換や話し合いを頻繁に行っています。それが、お客様に対しても同じように情熱を持って接するための基盤となっていると信じています。
外部にもHPやSNS、新聞記事などで積極的に情報発信をし、毎週弊社のラジオ番組で私たちの活動や社員の人柄など伝えるように心がけています。その結果、親近感が生まれて、ファンが増えているような感覚があります。ファンがいる事で仕事が楽しくなりますね。


調理から撮影、情報発信までを一括で行える十勝初の本格的なレンタルキッチン&スタジオ「とかちショクテラス」


―――御社が運営するレンタルキッチンスタジオ「とかちショクテラス」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響から事業見直しを進める中で新設を決めたそうですが、その背景を教えていただけますでしょうか。

(関向さん)私たちプロコムが得意とする分野の一つに撮影ディレクションがあります。特に十勝の強みは「食」であると捉えていて、当社にも食に関するPR案件が多く寄せられます。その際、食べ物をどれだけ美味しそうに撮影できるかが売り上げに直結します。十勝という食の名産地において、これは非常に重要な要素です。
しかし、驚くことに、十勝にはこのような専門の撮影施設がほとんど存在していなかったんです。そのため、札幌まで足を運んで撮影することも多々ありました。そこで「十勝は食こそが魅力なのに、なぜ専門の撮影施設がないのだろう?」と疑問に思ったわけです。
それに加え、新型コロナウイルスの影響で飲食店は営業規制や時短営業を余儀なくされ、商品が売れなくなっている中、非接触型の販売方法、特にオンライン販売が注目されてきました。そうした中で、十勝地域にも撮影ができる施設が一層必要になったわけです。金融機関の皆さんともアイディアを出し合い、「とかちショクテラス」の設立に踏み切りました。

「とかちショクテラス」外観の様子



―――「とかちショクテラス」について、特にこだわった部分があれば教えてください。

(関向さん)この施設にはいくつかこだわったポイントがあります。まず、スタジオ自体は3部屋ありますが、それぞれの部屋で大きさや設備が異なります。1階の1番大きなスタジオには移動可能なアイランドキッチンを設置しており、用途に合わせて自由にレイアウトを調整することができます。撮影の際には、その柔軟性が非常に重要だと考えています。また、1階部分は天井も通常より高く設計しています。その他、自然光がたくさん入るように設計しているスタジオや動画配信を行う際の配信環境を整えたスタジオもありますし、建物の外での撮影やイベント開催も可能です。これは、お使いいただく方の多様なニーズに対応できるようにするためです。このように多くの方々の要望に柔軟に対応できるよう、たくさんの工夫を施しています。

「とかちショクテラス」内観の様子



―――本施設はオープンしてから半年以上が経過しましたが、これまでどのような形で利用されているのでしょうか?

(関向さん)この半年間での施設の利用形態はかなり多様です。例えば、最近では学生、先生、そして地元の生産者が集まり、料理を作りながら意見交換や試食を行うといった会が開かれました。また、地元企業の方々がピザ作りのオンライン配信イベントを行ったり、野菜ソムリエの方が野菜に関する勉強会と実食のイベントを主催したりしています。これらのような用途以外にも、新商品の試作品作りなどにもご活用いただけます。
特に登録や事前審査はありませんが、初めて施設を利用される方には、まずは仮予約をして、施設を一度実際に見ていただくことをおすすめしています。

活用事例の様子

活用事例の様子



―――デザイン会社がレンタルキッチンスタジオを運営するという点が非常に特徴的だと感じますが、他にも独自のPRポイントや特色はありますか?

(関向さん)確かに、デザイン会社がレンタルキッチンスタジオを運営するという点はひとつの大きな特徴です。しかし、それだけではありません。例えば、お客様が「こんなイベントを開きたい」と考えているけれど、具体的にどう進めればいいのかわからないという場合、私たちは企画の初期段階からしっかりとサポートを行い、イベントのアイデア出しから具体的な実施に至るまで、全体を通してお手伝いすることができます。このようなイベントの企画支援も、私たちの施設が提供できる独自のサービスのひとつです。


―――最後に今後力を入れて取り組んでいきたいことや今後の目標などがあれば教えてください。

(関向さん)現在のアフターコロナの時代において、私たちは「付加価値の創造」に大きく力を入れていきます。以前は「安ければいい」という考え方も多かったように感じますが、今はそれだけでは不十分だと思います。ご依頼いただく企業や商品が持つ独自の価値をしっかりと見極め、その価値を高めることが求められています。この付加価値を生み出す過程でデザインはもちろん大切ですが、それだけでなく企業のビジョンや想いも大きな価値となり得ると私たちは信じています。たとえ商品の価格が高くなったとしても、その商品に相応の価値を見出すことができれば、消費者は納得します。そういった価値をクライアントと共に探し、具現化するために私たちはデザイン思考や新しいアイディアを提供します。
新しい価値を創造し、それを明確にすることで、商品やサービスの差別化が図られ、ブランド力が高まる。そういったプロセスをサポートすることが、私たちの事業で力を入れていきたい点です。

今回の取材を通じて、同社が十勝地域に与える影響は非常に大きいと強く感じました。特に、デザインの力を活用して地域の付加価値を高める事業展開は、十勝地域にとって欠かせない存在であると感じます。また、新型コロナウイルスの影響下で新設された「とかちショクテラス」は、単なるビジネス戦略以上に、地域の魅力を最大限に引き出し、付加価値を高めるための新たな挑戦とも言えるでしょう。
社員が持つ多様なスキルと、それを最大限に活かす企業文化、また、「ファンを作る」という姿勢は、顧客との深い関係を築くための独自のアプローチであり、これが地域に対する長期的な貢献につながっていると感じます。
このような企業が十勝地域に存在することで、地域全体のブランド力と付加価値が確実に高まっていると感じました。これからもLANDは同社の取り組みを応援していきます!


LINK

株式会社プロコム北海道
とかちショクテラス

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


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