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2014

一般社団法人NORTH ReDESIGN/Makura Showcase

福島 智大さん

#32「人々が活躍するための『余白』である空き家のリノベーションを通じ、人々の自己実現を叶える」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

今回は、幕別本町において、コミュニティスペース「Makura Showcase(マクラショーケース)」の運営や、幕別町内の空き家のリノベーション事業を行っている、一般社団法人NORTH ReDESIGNの福島さんにお話を伺いました!

一般社団法人NORTH ReDESIGN/Makura Showcase 福島 智大さん

プロフィール
福島 智大さん(ふくしま ともひろ) 一般社団法人NORTH ReDESIGN 代表理事

1991年、岐阜県下呂市生まれ。帯広畜産大学卒業後、帯広市内の出版・印刷会社にて月刊誌の編集や営業を担当。2020年に個人事業主として独立し、現在はデザインやイベント企画事業を行うほか、一般社団法人NORTH ReDESIGN 代表理事として、元々倉庫だった場所をリノベーションしたコミュニティスペース「Makura Showcase(マクラショーケース)」の運営や、幕別町内の空き家のリノベーション事業を行っている。

幕別本町の人々が交わる拠点”Makura Showcase”


――現在福島さんが運営されているMakura Showcaseは、どのような経緯でスタートしたのでしょうか?

(福島さん)現在、私が代表理事を務めているNORTH ReDESIGNは元々別の方々が立ち上げた団体なのですが、その方々がMakura Showcaseを2021年にオープンされました。この建物は国道に面していて、JR幕別駅からも徒歩5分くらいの場所にあるのですが、人々が集う拠点がこの地域に一つできれば地域の方々が結束して良い方向に動き出していくのではないかという構想のもと、Makura Showcaseができました。当時は幕別本町に空き家が増えていっていて、新しいことを始める人がいなかった状況だったんです。
 Makura Showcaseの運営が始まったちょうどその頃、幕別町を盛り上げたいとの想いから私が主催していた音楽フェス”LAMP LIGHT FESTIVAL”の企画書を幕別町役場に説明に伺ったところ、役場の方からNORTH ReDESIGNの方々を紹介されたんです。そして、2022年からは私がNORTH ReDESIGNとMakura Showcase運営を引き継ぎ、現在に至ります。これまでの運営チームの方々には、現在も施設の運営に関わっていただいています。この4月にはMakura Showcaseをリニューアルし、断熱材も導入しました。昨年度までは11〜4月の冬季はクローズしていたのですが、これからは通年でご利用いただけるようになります。

Makura Showcaseの内部の様子。ナチュラルな木材が多く活用された広々としたスペース



――Makura Showcaseはどのように使えるのでしょうか?

(福島さん)基本的にはご利用を希望される方ご自身でイベントなどを企画していただき、レンタルスペースとしてご利用いただくのですが、十勝の様々な分野の作家さんや高校生の方々にご利用いただくことも多いですね。元々倉庫だった場所をコンバージョンさせたものでスペースが広くあるので、先日のイベントでは様々な分野の作家さんが10のブースに分けて出展されていました。一つの空間でそれぞれの世界観が同時に共存できる、多様性のある共創イベントができるのが特徴かなと考えています。また、先日は私たちの主催で、先日幕別町の応援大使にご就任された逢坂芳郎さんの映画の上映イベントを開催しました。

Makura Showcaseで行われたイベントの様子。音楽イベントやマルシェ、町民による会議など様々な用途で活用されている



空き家のリノベーションプロジェクトが続々と進行中!


――NORTH ReDESIGNでは幕別本町内の空き家のリノベーション事業も行われていますが、どのような内容なのでしょうか?

(福島さん)幕別本町で新しく事業を始めたい方と空き家物件の所有者との間に入り、どういったコンセプトや内容の場所としてリノベーションを行うかの、全体のコーディネーションを行っています。出展希望者から相談を受けることもあれば、そろそろ店舗の維持が難しいため、店舗を誰かと共同で運営できないかと物件の所有者の方からご相談いただくこともあります。物件のリノベーションについては、NORTH ReDESIGNチームの建築士の方のアドバイスも受けながら行っています。
 また、町内には売りに出ていない物件や、所有者がどう活用すべきか分からず手付かずとなっている物件もあるのですが、仲の良いご近所の方などからの情報も集めながら、町内の空き家情報を少しずつマップ化していっています。改修が10年遅れるとかかる費用も上がってしまうため、早めに手を打っていくことが重要と考えています。
 実際に、Makura Showcaseのすぐ近くにある革製品やアクセサリーを扱うショップの“amina+”は、私たちがリノベーションを手がけました。元々は別の場所でショップを開かれていたのですが、私たちのリノベーション事業を知っていただいたことをきっかけに、Makura Showcaseのすぐ近くにショップを移転オープンしてくれたんです。

――現在進行中のリノベーションプロジェクトとしては、どのようなものがあるのでしょうか?

(福島さん)幕別町役場近くにある元美容室兼住宅だった建物をリノベーションしているのですが、一階部分には幕別町空き施設利用サポートセンターを構え、町民向けに空き施設に関することや移住、起業なども含めて総合的にワンストップでサービス向上を図れる場とし、また一階の前面スペースはスタートアップ支援スペース、二階はギャラリーなどをはじめ多目的に活用できる複合施設とするプロジェクト「幕理(まくり)」を進めています。このスタートアップ支援スペースでは、来年度から本格的に始動予定の町内の農家さんが野菜の直売所を始める予定です。その他にも、新しくバーやカフェ、洋食屋、福祉施設やオフィスを作りたいという相談を受けています。主には十勝管内の方から相談を受けることが多いですね。

リノベーションプロジェクト中の「幕理(まくり)」(※取材を行った6月中旬頃の様子)



リノベーション後の「幕理」。右上:幕別町空き施設利用サポートセンター、左下:スタートアップ支援スペース、右下:ギャラリーなどをはじめとした多目的に活用可能なスペース



――幕別本町も人口減少による地域の活性化に課題があるのではないかと思いますが、現状をどのように捉えていますでしょうか?

(福島さん)これまでは町で新たに事業を始めようという動きが少なく、実際に“amina+”はこの地域ではかなり久しぶりの新規開業だったんです。これからの10年間でこの地域のお店は加速度的に閉じていってしまうものと捉えていて、若い世代への世代交代を行なっていかなければならないタイミングではないかなと考えています。
 一方で、この地域は土地代が安く抑えられる点や幕別町役場からの支援(空き店舗を賃借しての出店に対する補助金など)もありますし、物件を所有している方も誰かに託したいというニーズは多くあるので、これから町内で出店を考えている方にとってはむしろメリットはたくさんあると思っています。若い方々に上手くバトンタッチしていくことができれば地域が一気に面白くなると思いますし、Makura Showcaseだけでなく、そういった若い方々の魅力的なお店が他にもたくさんできれば、この地域を訪れる理由になりますよね。そういった構想に向かっていけるのが面白いですし、課題があることは伸び代があるということだと思うんです。

Makura Showcaseの近くにオープンしたamina+



――幕別本町では、町の人々が活発に地域の活性化に取り組まれている印象があります。

(福島さん)幕別本町の住民の方々は地域への愛着が強いのではないかなと思います。町への想いがある人は実際に動き始めていて、ここで自己実現をしようという動きにつながっていますし、町の状況をなんとかしようという話を住民同士でできるつながりがこの地域にはあります。また最近では、同じ町内の札内地域の団体からも、札内駅前の寂しくなってしまった状況をなんとかしたいと相談を受けています。この地域で向き合ってきたことが、他の地域でも活かせるのではないかなと考えています。

空き家こそが人々が活躍するための「余白」


――Makura Showcaseやリノベーションされた場所を活用して、今後はどのようなことを行っていきたいとお考えでしょうか?

(福島さん)現在、幕別清陵高校の学校運営協議会の委員を勤めているのですが、今後はそういった地域の教育に関することにも携わっていきたいと考えています。そう思うようになった元々のきっかけは、音楽フェス”LAMP LIGHT FESTIVAL”の運営ボランティアとして幕別清陵高校の生徒さんが約60名関わってくれたということがあるんですが、そこから同校との関係が深まっていきました。幕別清陵高校では、生徒が地域の人々から学ぶ「社会教育」の考え方を大切にしているのですが、その考え方に触れた際に、Makura Showcaseという人と人とを繋ぐ場所で、まさにその「社会教育」の考え方を実践していくべきだと気づいたんです。
 今後は、実際に生徒が発案したプロジェクトを実現するためのサポートを行っていきたいと考えていて、例えばイベントをやりたいという生徒がいればMakura Showcaseで実現に向けたサポートを行いたいですし、農業に興味がある生徒に対しては農家の方とお繋ぎするといったように、生徒と地域の人々を繋ぐ橋渡しの役割を果たしていきたいと考えています。そういった活発なアイデア出しを協議会の中でも行っているところです。



――最後に十勝の方々へのメッセージをどうぞ!

(福島さん)幕別本町は空き家の問題であったり課題は多いのですが、それこそが人々が活躍するための「余白」だと捉えています。この地域で人々が挑戦しやすいフィールドを整備し、そこに色々な方が関わり自己実現ができるようになれば地域が元気になっていきますよね。今後も地域の人々との交流を深め、一緒に楽しみながら、挑戦しやすい場所としてこの地域を良くしていきたいと考えています。


人口が減少していく中での地域活性化という、これまでの歴史の中で誰も取り組んだことのない課題に挑戦しなければならないこの時代にあって、自身の実現したいことや地域への想いを持っていればサポートしてくれる環境がここにはあります。
実際に福島さんの活動がきっかけとなり、「じゃあ自分も新しく挑戦してみよう!」と動き出す方々も現れ始めているとのことです。福島さんのお話から、発火した想いが連鎖し、やがて町に灯りが灯っていく情景を想像することができました。
LANDとしても福島さんの活動を応援していきます!

LINK

一般社団法人NORTH ReDESIGN


協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


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