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一般社団法人十勝スタイル

北村 貴さん

#6「質の高い2次情報の発信者になりたい」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

「日本の食糧基地」「食材の宝庫」と言われる十勝ですが、生産物は原料としての出荷が多いことから、付加価値向上が課題とされています。商品開発と販路開拓で十勝の付加価値向上を目指すプロジェクトを推進している一般社団法人十勝スタイルの北村貴さんに、地域外への商流づくりとは? 十勝スタイルが目指す企画・流通・マーケティングの取り組みなどについてお聞きしました!

一般社団法人十勝スタイル 北村 貴さん

プロフィール
北村 貴さん(きたむら たか) 一般社団法人十勝スタイル 理事

1967年十勝浦幌町生まれ。石油メーカー、マーケティング会社勤務を経て、1997年、ITマーケティング会社(株)マーケティングジャンクションを創業。2005年北海道にUターンし2007年(株)グロッシーを創業。「毎日のテーブルにストーリーを」をテーマに、全国の料理家350人や生産者と食が創り出す豊かな生活を提案。大手メーカーやレストランの商品開発・PRを手掛ける一方、全国の自治体や地域に根付く企業とともに様々なビジネス活動を行っている。2015年、一般社団法人日本味育協会を設立し、理事に就任。2020年、地方創生×人材育成を目的にDailogue for Everyone(株)を設立。

物をつくり、人とつなぎ、外に発信して販売する

――北村さんは、長らく食に関連する取り組みを続けてきたと思いますが、十勝スタイルを立ち上げたのはなぜですか?

(北村さん)十勝は素材の宝庫ですが、なかなかその先に進まないというのが何十年もの課題だと思います。私自身はこれまで、食に関連する取り組みではマーケティング面の支援を主におこなってきましたが、これから先の地域の未来を見据え、自分だけでなく仲間と共に、これまでのスキルやノウハウを複合的に地域のために活かしたいと考えました

――十勝スタイルは4人で立ち上げたんですね。

(北村さん)はい。地域のために尽力されていた元本別町長の高橋さん、地域産品の販売事業をおこなっている加藤さん、とかち熱中小学校を共に運営している弁護士の木野村さんと共に事業を立ち上げました。4人とも、地域に対する視点が共通しています。それぞれバックグラウンドも経験も異なりますが、そこが異なっているからこそ、一人ひとりだけでできないことが、十勝スタイルを通じて提供できると思っています。

『商品の背景や意味を理解した上で買いたい』

――どんなことを十勝スタイルで取り組んでいるんでしょうか?

(北村さん)物を作り、人とつなぎ、外に向かって発信して販売する、ということに取り組んでいます。現在は、地域外への商流を作るためのイベントの実施や、ふるさと納税のサポート事業が多いです。
最近では、2022年10月に東京の白金台で、十勝産品を販売するテストマーケティング的なイベントを実施しました。お客さんは目が肥えているので、いつもと違うものがあると手に取る。商品を販売するだけでなく、どういうお客さんがそこに来るのか、どんな商品が受け入れられ、どんな商品が受け入れられにくいのか。どこを改良すれば、受け入れられるのか。私たちがしっかりと理解し、それをメーカーさんや生産者さんにフィードバックすることがキーポイントです。イベントでは、その点を重視しています。

――販売を通じて、お客さんの購買行動や反応、変化などを感じましたか?

(北村さん)以前のように「北海道」「十勝」というだけで売れる時代は終わりを迎えつつあります。今回のイベントでは「商品の背景や意味を理解した上で買いたい」というユーザーの思考の変化を感じました。背景を伝え、理解されると購入につながります。白金台にはエシカルなユーザーが多く、生産者のポリシーに共感して購入する方が多数いらっしゃいました。そういうお客さんが増えてきたのは、十勝にとって追い風だと思います。それを実感しました。

「まちが取り組むべきOS」を理解し、課題に取り組みたい

――ふるさと納税に関連する取り組みについてもお聞きします。ここ数年で制度としても定着し、返礼品として地域産品も多く地域外に届けられています。ふるさと納税については、どう捉えていますか?

(北村さん)まず、各市町村に「まちが取り組むべきOS」があると思っています。例えば、上士幌町であれば「セントラルベルト」という計画をベースに街づくりが進み、そこにICT技術やふるさと納税のサポートで生まれた数々の施策があり、移住者が増えています。浦幌町は小中一貫のコミュニティスクールを核とした「こどもの教育事業」を通じて、将来住み続けたい、次世代が引き受けたいと思うような街づくりをし、実際に20代の転入超過が起こっていたりします。各町村それぞれが持っているOSがあり、OS上で動くソフトウェアは施策という形で投入されています。でも、そこがしっかり動くための血液はお金。そこにふるさと納税を使いたい、と考えている町村は多い。ふるさと納税なら、町村も新しいことにチャレンジしやすい。そのチャレンジを、十勝スタイルでお手伝いさせてもらっています。

――ふるさと納税のサポートでは、具体的にどんな取り組みをしているかを教えてください。

(北村さん)ふるさと納税を増やすためのお手伝いがメインです。町にとって何が必要か?ということを町村の方と一緒に考えながら、ページの作り替えだけじゃなく、一緒にイベントをやったり、十勝スタイルで商品の物流を担当したり、町に足りないものを自分達が引き受けてやっています。商品の企画や見せ方、オペレーションなど、それぞれ課題は異なります。既に実施体制があるのがほとんどなので、実施体制を変えるのではなく、町が課題に感じているところをサポートしています。

狙いが明確であれば、やってみてダメでも修正できる

――ふるさと納税の返礼品の他、製造した商品の販路開拓などで悩んでいる方も多いのではと思います。

(北村さん)十勝は素材があるからこそ、作ってから売り方を考えるプロダクトアウト型の商品開発が多く、マーケットのニーズを捉えるのが少し弱いと感じます。マーケットのニーズを捉えてから商品を開発するマーケットイン、あるいは、社会的な責任や「社会はこうあるべき」という背景からマーケットに商品を提供していく「アウトサイドイン」と言われる考え方を重視しています。

――これから先、どんな事を目指していますか?

(北村さん)コンセプトや狙いが明確であれば、やってみてダメでも修正できる。でも、そこがないと、何がダメなのかがわからなくて修正できず、いいものを作れない。結局はトライ&エラーの繰り返しなのだと思います。作り手の方がやっている、良い生産物や商品をつくることは、私たちにはできない。そこに専念していただいて、私たちは商品の企画であったり、流通、マーケティング全般の部分を担っていきたいと思っています。

私たちは、声を発しない生産物や商品、作り手の代弁者になりたい。質の高い二次情報の発信者になりたいと考えています。そのためにはまず、私たちが「まちのOS」をもっと理解することが重要。それぞれの町村が抱えている課題ごとにご一緒させていただき、お役に立てればと考えています。

十勝スタイル北村さんの話から、「地域に足りていない部分を担いたい」という強い思いを感じました。生産者やメーカー、自治体やふるさと納税関連の事業者など、それぞれがそれぞれの役割を担う中で、継続的な販売に結びつけるためには、十勝スタイルさんのような存在が力になってくれるはずです。十勝スタイルさんのお取り組み、LANDはこれからも応援していきます!

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一般社団法人十勝スタイル

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会

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