北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

  1. ホーム
  2. 発見する!
  3. コミュニティ
1485

昭和商学校

Paletteさん

#50「令和なのに昭和!廃校利活用の最前線としてビジネスを生み、雇用や人口増に繋がる昭和商学校 Palette」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

音更町にある旧昭和小学校を再生させた「昭和商学校 Palette」は、地域の新しいビジネスの拠点として注目されています。その背景と目的、そしてこれからの展望について、音更町役場企画課の大井さん、横井さん、そして、入居企業第一号の山忠HDの池内さん(通称:昭和商学校 Palette校長)にお話を伺いました。
(所属は取材当時のものです。)
(聞き手:帯広市浜田)

昭和商学校 Paletteさん

プロフィール
Paletteさん(旧昭和小学校)

2020年に閉校した音更町立昭和小学校をリノベーションし、音更町が運営する地域経済活性化拠点。サテライトオフィスやコワーキングスペースとして利用でき、都市部にいるときと遜色のない仕事ができる環境が整備されています。
農村部に位置しており、季節によりさまざまな魅力を与える農村風景など、音更町が誇る豊かな自然を感じながら多様な働き方ができるほか、入居事業者や利用者、イベントの参加者同士の交流から新しい人の流れやビジネス創出が期待される場です。

左から、今回インタビューした音更町横井さん、大井さん、山忠HD池内さん



閉校した小学校が事業創発拠点へ


――昭和商学校 Paletteとは、具体的にどのような施設なのでしょうか?
(音更町 横井さん)昭和商学校 Paletteは、2020年に閉校した昭和小学校をリノベーションした施設です。ここでは、都市部に引けを取らない働き方ができるサテライトオフィスや、2023年6月にオープンしたシェアキッチンを設けています。シェアキッチンは、地元の農畜産物を活用した新商品の開発や、飲食分野での起業を目指す方々にとって最適な設備が整い、今では数ヶ月先まで予約でいっぱいとなっています。また、施設を利用するさまざまな人々が交流し、新しい事業活動が少しずつ生み出されています。

――どのような背景から、このプロジェクトは始まったのですか?
(横井さん)発端は、廃校になった昭和小学校の跡地利用をどうするかという音更町の課題から始まりました。利活用の方向性としては企業誘致、関係人口の増加、商工業の活性化を目指すこととなりましたが、特にその時期に流行していた新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、テレワークなど多様な働き方の推進が必要とされる動きが強まり、廃校をサテライトオフィスとして活用していくこととなりました。

――現在サテライトオフィスの入居状況はいかがでしょうか?
(音更町 大井さん)順調に入居企業も決まり、入居スペースの空きは共有会議室を除けば残り1室となりました。入居企業同士のコミュニケーションも活発で、最初に入居いただいた山忠HDの池内常務には様々な場面でご協力いただいており、気が付くとPaletteの校長と呼ばれているほどです(笑)。入居者と音更町との情報交換をきっかけに、当初は想定していなかった連携の動きも生まれています。山忠HDが小樽商科大学との共同研究を実施していたご縁から、2022年8月に音更町と小樽商科大学で地域の発展や人材育成等を目的とした包括連携協定を締結し、2023年4月には「小樽商科大学 音更サテライト」を開設していただくこととなりました。

 ちなみに、「昭和商学校Palette」の名前ですが、小学校の字を「商」としているのは、音更町のビジネスの創出拠点として、地域産業の活性化を目指す意味があります。そして「Palette」は絵画のパレットがそれぞれの色が混ざりあって鮮やかな色を新たに生み出すように、昭和商学校でも様々な人が活動し交流することで新たな事業活動などを生み出すことを目指すという思いがあります。


入居者同士が連携し合う農業や食、アカデミック等の複合拠点へ


――「校長」と呼ばれている池内さんに伺います。入居された理由を教えてください
(山忠HD 池内さん)まず、入居の決め手になったのは、昭和商学校 Paletteの立地でした。当社グループの山本忠信商店の社屋や音更の市街地、役場との距離感が遠からず近すぎずで丁度良く、施設が業務に適した環境であったこと、光回線も利用できる点など、初めてこの場所を見た時に「使えるかもしれない」と直感したのを覚えています。

――施設を使われてみての感想や期待する事はありますか?
(池内さん)管理者である町と入居企業同士の運営ミーティングが月一で行われており、行政と民間事業者、また大学を含め、施設運営を通じて、日常の中で産官学での接点を持つ機会が多く、情報交換ができるところが素晴らしいと思っています。サテライト設置を模索されていた小樽商科大学さんにPaletteの存在をお伝えしたのがきっかけで、実際にサテライト設置に繋がりましたが、昭和商学校Paletteがただのサテライトオフィスだけでなく、十勝管内にいる小樽商大の卒業生と現役学生との接点の場になったり、事業創出へと展開したらいいなと思います。まずは、十勝管内の社会人のリカレント教育の場としての役割を期待しています。
 それ以外にもPaletteは地域と繋がれる場になっていけば良いと思っておりまして、体育館やグラウンドは、地域の方の活動の場にもなっているので、スポーツ系のプロジェクトやサッカーチームとの連携も進めており、昭和地域・音更町の子供たちが参加することで、地域に根ざした活動を促進できればよいですね。
 また、昭和地域の農場と協力した農業体験やワーケーションを通じて関係人口を増やす取り組みをしたり、地域の農産物をPalette内のシェアキッチンで調理するなど、ゆくゆくは昭和地区産・音更町産の作物の価値を高めて地域を盛り上げる場所になっていけばいいなと考えています。

――学校周辺地域のことまで考えているなんて発想が「校長」ですね!
(池内さん)正式に校長という役職を拝命したわけではないのですが(笑)、すべてはPaletteに可能性を感じるからこそ、新たな発想が浮かぶんです。山忠HDとしては、現時点でビジネスに直結した事例はありませんが、これからつくっていきたいと考えています。あとは、ビジネスが生まれる場として、少なくとももう1社か2社の企業が入居することを望んでいます。特に情報収集に力を入れているチームが入居することが理想です。現在はITシステム企業、ソーシャルビジネス企業、研究機関(小樽商科大学)、食(シェアキッチン)があるので、情報収集に長けた企業が入り連携することで十勝にはなかった新たなビジネスが農商工×産官学の連携で誕生するのではと期待しています。

――音更町の横井さんに伺います。Paletteのコワーキング利用やシェアキッチンの利用状況はいかがでしょうか?
(横井さん)コワーキングスペースに関してはオープンから10か月で延べ約400名の方に利用していただきました。想像以上に反響があったのがシェアキッチンですね。保健所による営業許可の取得が可能な設備ということもあり、フリーランスで菓子製造を行っている方や、商品開発をされたい農業者、起業を目指している方など様々な方々に活用いただいてます。ここで生み出された食品が市場に出回りつつあることも嬉しいです。常時、12名の方が利用されており、そのうち8名が起業しました。お陰さまで数か月先まで予約でいっぱいです。

様々な設備が利用できるシェアキッチン



ワーケーションからの移住など、更なるきっかけ作りに挑戦


――LANDに事業相談に来られた方の入居や利用も多いようですね。昭和商学校 Paletteの今後の展望を教えてください。
(大井さん)今後は、池内さんが仰るように、サテライトオフィスへの企業誘致を積極的に行っていく予定です。また、コワーキングスペースやシェアキッチンを利用する人々の増加を目指し、新たなビジネス創出に繋がるような活動をさらに推進していきます。音更町の関係人口創出とビジネス創出の拠点として、Paletteは様々な取り組みを行っていきます。
 特に注力していきたいのはワーケーション利用です。ワーケーションには「余暇主体の休暇型」と「仕事主体の業務型」 がありますが、音更町には、個人・家族・企業研修いずれの形態で来られても、ワーケーションができる環境が揃っているんです。宿泊は十勝川温泉等の町内宿泊施設、テレワークは昭和商学校Palette、目の前に広がる広大な畑のパノラマや豊かな自然環境での農業体験もできます。個人や企業の研修でのニーズもあると考えています。

――これまでにワーケーションで利用された事例はあるのでしょうか?
(横井さん)これまでの実績としては学生利用が3件、ワーケーション自体はありませんが廃校のサテライトオフィス利用という事で他の自治体や民間企業など全国各地からの視察も増えています。学生利用では、大学生が個人やゼミの研究で自治体や地元企業と連携し、地域を訪れて学び交流しながら地域課題の解決策を考える中で、地域への貢献のみならず、学生の能力向上につながる取り組みを検討される方が多いですね。こうした町外からの交流は昭和商学校Paletteの目的の一つである関係人口創出に寄与するものでもありますし、UIJターンによる移住・地元企業の採用につながるものなので推進していきたいですね。

――最後に十勝の方々へのメッセージをお願いします。
(横井さん)音更町における新しい働き方、ビジネスの場を提供することが十勝地域の活性化に繋がっていくと考えています。昭和商学校 Paletteは今年度からコーディネーターとして施設の運営を行う地域おこし協力隊の募集もはじめました。近い将来、昭和商学校 Paletteは、多様な人々が集い、新たな価値をさらに生み出す場となっていくことを信じています。ぜひ一度、この場所に足を運び、未来の可能性を一緒に感じてみてください。


編集後記
音更町で進むこの興味深い試みは、新たな働き方とビジネスの創造を実現する場として、大きな期待を集めています。音更町が持続可能な社会の発展に寄与し、地域全体の活性化を目指していることが強く感じられました。昭和商学校 Paletteは、多様な人々が集い、新しい価値を生み出すことで、未来への可能性を広げて行くでしょう!
(帯広市浜田)


LINK

昭和商学校ウェブサイト


協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


お問合せ

この記事に関するお問合せはLANDまでお気軽にどうぞ!

関連記事

↑ページ先頭へ