北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

  1. ホーム
  2. 発見する!
  3. サポート

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!
今回は、2024年に帯広市大正に「Skate Park PLANT」をオープンした合同会社ニセントワークスの田中健太郎さん、沙織さんご夫妻を取材しました。

スノーパークアイテムや、スケートボードセクションの設計・製作から始まったニセントワークスがスケートボードパークを運営するに至った経緯や、スケートボードに対する思い、将来の構想など存分に語って頂きました。

合同会社ニセントワークス 田中健太郎さん

プロフィール
田中健太郎さん(たなかけんたろう) 代表社員

合同会社二セントワークス代表。帯広市出身。龍谷大学先端理工学部機械システム工学科卒業。卒業後は、祖父が営んでいた農業を事業承継し、夏場は農業を行いながらスロープスタイル全日本選手権に北海道代表として2年出場。その後スノーボード映像制作を経て、2015年から当事業を開始。2024年8月、「Skate ParkPLANT」をオープン。

田中沙織(たなか さおり)さん
Skate Park PLANTスタッフとして従事。帯広市出身。看護専門学校を卒業後、看護師として勤務。一度退職して、スノーボード・スロープスタイル全日本選手権に北海道代表として1年出場。再び看護師として復帰した後、二児の母として子育てに奮闘。現在は、「Skate ParkPLANT」の運営を担当。

選手時代の経験を活かし、スノーパークアイテム製作の道へ


――まずは、ニセントワークスの基本的な事業内容について、お聞かせください。

(田中健太郎さん)スノーボードアイテムやスケートボードセクション製作、スノーパークのプロデュース事業を行っています。2024年8月からは帯広市大正地区にスケートボードパーク「Skate Park PLANT」をオープンし、スケートボート教室を開催したりと若い世代の育成にも力を入れています。


――田中さんご自身も、もともとスノーボードやスケートボードをされていたのですか。

(田中健太郎さん)高校まではアイスホッケーをやっていて、スポーツ推薦で龍谷大学に進学したのですが、同時にものづくりにも興味があり、機械システム工学を専攻しました。スノーボードは大学在学中から本格的に始めて、長期休暇中はスキー場で住み込みのアルバイトをしながら没頭しました。そのうちアマチュアの大会にも出場するようになりました。このように大学在学中は、夏場はスケートボードをやり、冬場はスケートボードとスノーボードを並行してやっていました。

大会出場時の写真(2014年2月 札幌雪まつり会場内、白い恋人PARK AIR)



――大学卒業後も、スノーボードを続けられたのですか。

(田中健太郎さん)卒業後の進路を考えたとき、「スノーボードをこれからも続けたい」という思いを抱えていたところ、祖父の代から後継者もおらずほとんど休止状態だった農地(現在のSkate Park PLANTがある土地)のことが頭に浮かびました。
そして帯広に戻り、夏の間は畑の仕事を継いで農業をしながら、冬は選手としてスノーボードの大会に出るという生活が数年続きました。25歳くらいまでのことです。


――それから、ご自身でスノーパークのアイテムを制作していくことになるのには、何かきっかけがあったのでしょうか。

(田中健太郎さん)本格的にスノーボードをやっていた時期は、自分が作り手に回ることはあまり考えていなかったのですが、どこのスノーパークに行っても、十分な練習環境が整っているとはいえませんでした。ジャンプ台やレール、ボックス(スノーボードやスキーで上に乗ってスライドしたり、技をするための平らで幅の広い台)などがあるにはあるものの、クオリティがよくないとずっと感じていて……。「だったら自分で作ってみよう」とボーダーとしての自身の経験と、大学時代に培った機械工学の知識を総動員して、見様見真似で始めたのがきっかけです。

製作したレール、ボックス等



――近年は、アイテムの販売だけではなくスノーパークのプロデュースまで手がけていらっしゃるんですね。具体的にはどういったことをされるのでしょうか。

(田中健太郎さん)設計からアイテムの製作、圧雪やコース整備などを一貫して請け負うのがプロデュース業です。アイテムの製作についても、例えばキッカー(ジャンプ台)などのサイズや角度を細かく検討し、他のスキー場との差別化を計りながら、個別に提案をしています。最近では、紋別市営大山スキー場や、さっぽろばんけいスキー場などでアイテム制作を手掛けました。2025年3月には、十勝サホロリゾートスキー場で、アイテムの製作だけでなく、コース全体の設計をプロデュースしました。

手掛けたコースコース(2025年3月 十勝サホロリゾートスキー場)



「いつか」の思いが形に。念願のスケートボードパークをオープン。


――ここからは、昨年オープンした「Skate Park PLANT」についてお伺いします。まずはお祖父様から引き継いだこの土地に、スケートボードパークを作ろうと思った経緯について教えてください。

(田中健太郎さん)昔から「いつかスケートボードパークを作りたい」という漠然とした思いはありましたが、それを事業として成り立たせるのはハードルが高いと感じていました。
そもそも、十勝はスケートボード人口が少ない土地です。競技人口が少ないから環境が整っていないのか、環境が整っていないから競技人口が少ないのか、私はそのどちらもあると考えているのですが、土地を買ったり借りたりして家賃を払いながら収益を上げていくのは、かなりのリスクになると思っていました。
ただ、幸いなことに祖父から受け継いだこの土地がありました。ここならば、パークさえ作ってしまえば、あとはそこまで固定費を掛けずに継続できるのではと、最終的なオープンまで踏み切りました。

Skate Park PLANT



――どのような利用体系で運営されているのでしょうか。

(田中沙織さん)基本的には月額6,000円の会員制で、会員の方はフリーで利用できるようになっています。非会員の方は1日1,500円での利用も可能です。2024年8月のオープンから11月までの4ヶ月間で、会員は40名ほどになりました。営業時間は平日午前11時から午後9時まで、土日祝日は午前10時から午後9時までですが、営業時間内なら私たちが不在でもいつでも自由にご利用頂けます。12月から3月は室内で営業しています。詳細は弊社のホームページや、Instagramをご覧いただければと思います。

ホームページはこちら


――どのような方がパークを利用していますか。

(田中沙織さん)一番利用が多いのは小学生とその親御さんの世代です。平日は、学校終わりに部活動のような形で利用してくださっている方が多いですね。子どもたちは、学校が違ってもこのスケートボードパークで毎週会っているうちに、どんどん仲良くなります。最初は子どもたちの送り迎えで来ていた親御さんたちが、試しにスケートボードをやってみる中で、いつのまにかハマってしまうということも。子どもたちは、目の前で楽しくおやつタイムを取っているのに、大人だけ夢中になっていたりという光景も見られます(笑)
十勝管外でも少しずつ認知されてきているようで、夏季休暇中に札幌から来てくださった方や、毎週のように釧路から通ってくださる方もいます。


Skate Park PLANTからスケートボード選手を輩出する日まで


――現在行っているスクールや、選手の育成についても伺いたいと思います。2024年は、どのようなスタイルでスクールを運営されていましたか。

(田中健太郎さん)私たちのスクールは「気軽に始められる」をコンセプトにしています。まだスケートボードをやったことがない方、やりたくても始め方が分からない方に一から丁寧に教えることを心がけています。
道具がなくても貸し出しをしているので、全く問題ありません。少しでも気になったら、まずは手ぶらで来てもらって、楽しかったら続けてもらいたい。スケートボードの第一歩、入口の場所として、門戸を開いています。


スケートボードは、練習を重ねて段階を踏んでいくと、挫折しやすいポイントがいくつも現れます。コツコツ練習をしないと上達が実感できないスポーツでもあって、うまくいかずに挫折してしまう人もかなりいるんです。一人一人が自分に合った目標設定をして、徐々にレベルを上げていけるようサポートし「スケートボードを継続できる環境づくり」を整えていきたいと思っています。
2025年度のスクールについては現在準備中ですので、こちらも詳細は随時ホームページやInstagramで告知する予定です。


――選手育成についての構想を聞かせてください。

(田中健太郎さん)スケートボードが上達すると、スポンサーがついて、大会に出て、実績を収めてプロの道へというルートがあるのですが、いくら練習してもその道が見えてこないことがあります。私自身も、自分一人ではなかなかそのルートを見出せず、プロへの転向が上手くいかなかったという過去があります。
これからスケートボードを始める子どもたちには「プロの道」というものを当たり前に用意してあげたいんです。スケートボードメーカーや一般企業、地域企業とのコネクションを用意して、スポンサーが付けば、あとは独り立ちしてキャリアを積んでいける。ここで上達した子どもたちが集まって、クラブチームを結成し、各々大会を目指せるようになることが一つの理想です。


――スケートボードパークの今後の規模拡張や設備充実化など、構想を教えてください。

(田中健太郎さん)現在のパークは、初心者の子どもたちであれば十分に練習できる環境は整っているのですが、今後は中上級者の方々にも満足してもらえるよう、数年をかけて徐々に拡張していきたいと考えています。
それからもう一点重要なのは、冬でもできる室内環境です。2024年12月に倉庫を改造して、ランプ(両端がアールになったセッション)を2台セットした屋内パークを造りましたが、天候を問わず一年を通して使用できるようなより良い環境づくりも構想している段階です。

屋内パークの様子



――今後の事業について、他にも何かお考えはありますか。

(田中健太郎さん)十勝の各市町村に1箇所ずつ、スケートボードパークが作れないかと構想していて、各自治体に働きかけているところです。町内の中高生が学校帰りに自転車で行けるような場所にパークがあれば、スケートボードをより身近なものとして楽しんでもらえると思っています。

廃校や空き家などを活用したり、近年は部活動の縮小化や、その指導を民間に委ねる「地域移行」などの動きもあるので、地域の課題解決ともうまくマッチングできればいいですね。パークは場所によって設計を変えて差別化し、個性を出すことができるので、休日は別の町のパークに遠征したりなど、ボーダー同士の往来も期待できます。


――田中さんがスケートボードを通じて、これまでに得た最も印象的なことや学びがあれば教えてください。

(田中健太郎さん)スケートボードは「公共の場所で危険な行為をして迷惑を掛ける」というような、どちらかといえばあまり良くないイメージをお持ちの方もいるかもしれません。だからこそ、自分が「何のためにスケートボードをやっているのか?」「なぜスケートボードを仕事にしているのか」については、真面目に考えざるを得ないんです。

例えば「街中で滑っていたら、苦情が来て警察沙汰になってしまったという場合、それは何故なのか?」当たり前だと思っていた常識やルール、その「良い」「悪い」や「許される」「許されない」の線引きは、なぜこのラインでなされているのか。私自身これまでの経験でスケートボードを通して世の中の根本的なところを考えるきっかけにもなりました。同時に、スケートボードの負のイメージにも目を向けながら、社会での立ち位置といいますか、どのようなスタンスでスケートボードを続けていくべきかについてもよく考えました。

世間に対して「スケートボードは、決して邪魔な存在ではない」ということをどう示せばよいか?しっかり学校で学んで就職をして、誰の目から見ても良いとされるルートを行くことだけが人生の正解ではない。世の中には、絵を描くことや歌を歌うこと、そしてスケートボードだけをやって生きている人もいる。そういう人生のルートもあるということ。その「多様性」を私たちのような大人がいることで、社会に提示していけるのではと思っています。


――ありがとうございました。最後に、十勝のみなさんへメッセージがあれば、お願いします。

(田中健太郎さん)このパークは、どんな方でも気軽に来て頂きたいと思っています。さらには、なかなか学校に馴染めない子や、人とうまくコミュニケーションを取れない子でも、ぜひ気軽にここに来てスケートボードを楽しんでもらいたいですね。その子にとって一見短所に見える部分でも、そのような性格や特性そのものが、スケートボードをやる上では才能として活かせる、長所となるかもしれません。そういった子どもたちがパークに来て、黙々と練習を続けて上達する姿を私たちは見ています。

また、私たちの活動を応援してくださるスポンサーを募集しております。スケートボードを通して、地域を盛り上げていきたいというポリシーに共感頂ける方とも協業していければと思っています。私たちの活動に関心を持たれた方は、お気軽にご連絡頂ければ幸いです。


編集後記
​合同会社ニセントワークスの田中健太郎さん、沙織さんご夫妻へのインタビューを通じて、スノーパークアイテム製作からスケートボードパーク「Skate Park PLANT」の運営に至るまでの情熱と取り組みを深く知ることができました。​十勝地域にスケートボード文化を根付かせ、次世代の選手育成を目指すお二人の姿勢は、多くの人々にとって刺激となるでしょう。​LANDは、合同会社ニセントワークスのこれからの活動を応援しています。


LINK

Skate ParkPLANT


協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


お問合せ

この記事に関するお問合せはLANDまでお気軽にどうぞ!

関連記事

↑ページ先頭へ