北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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STARTUP HOKKAIDO

田中 美帆さん

#42「海外スタートアップとの連携から北海道におけるスタートアップエコシステムの醸成に挑戦する」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

北海道スタートアップシーンの第一線で活躍するSTARTUP HOKKAIDO実行委員会の海外担当・田中 美帆さん。海外からのスタートアップを日本に呼び込む重要な役割を担い、同時に北海道内のスタートアップを世界に紹介する使命を持っています。彼女の豊富な経験と、北海道のスタートアップエコシステムに対する熱い思いに迫ります。どのようにして海外と北海道の橋渡しを行っているのか、そして、北海道、特に十勝地方の潜在的な力と今後の展望について話を聞きました。
(聞き手:LAND小田、帯広市経済部 浜田さん)

STARTUP HOKKAIDO 田中 美帆さん

プロフィール
田中 美帆さん(たなか みほ) STARTUP HOKKAIDO実行委員会 海外担当

北海道への海外スタートアップ誘致、スタートアップビザ制度の策定、海外カンファレンスのコーディネート、海外PRを担当。海外起業家のニーズに寄り添う支援策を行政と共に展開し、2024年1月には北海道発の海外カンファレンス「Hokkaido Innovation Week」を主催。

北海道スタートアップの海外展開・海外スタートアップの日本進出をリードする


――STARTUP HOKKAIDOでの活動内容について教えてください。

(田中さん)北海道、札幌市、北海道経済産業局、北海道大学が連携し、北海道からグローバルを目指すスタートアップを生み育てるエコシステムの実現に向けて2023年9月に立ち上がった「STARTUP HOKKAIDO実行委員会」の事務局内で、私は海外のスタートアップを日本に招聘する役割を担っており、特に海外起業家向けに日本での起業を容易にする「スタートアップビザ」のプロジェクトを推進しています。
 2022年度は、まず海外のスタートアップを日本に誘致することに注力しました。そして2023年度は北海道内のスタートアップ・エコシステムを北欧を中心とする欧州地域に紹介することに注力し、複数の海外カンファレンスやイベントにも参加しました。社会課題の解決を意識し、信頼に根ざすソーシャル・トラストを基盤として社会を築く「北のエコシステム」と北海道のエコシステムを繋ぐということを意識しています。
 STARTUP HOKKAIDOでは、特に北欧のスタートアップとの連携強化を掲げています。北海道のスタートアップはシリコンバレー型のスケール重視のビジネスモデルを目指すよりも、人口減少や高齢化、エネルギー問題などの社会的課題を深く捉え、サステイナブルな社会形成に取り組んでいる企業が多いと考えています。北海道は社会課題先進地域と言われますが、インパクトスタートアップ(社会的・環境的課題の解決や新たなビジョンの実現と、持続的な経済成長をともに目指す企業)の輩出に力を入れる北欧と北海道との親和性が高いものと感じています。

――スタートアップビザを活用した外国人起業家の活動状況はどのような状況なのでしょうか?

(田中さん)スタートアップビザを活用して北海道に拠点を設けようと考えている企業は増えており、直近では農業分野の起業家の注目度が高まっています。例えば「わさび」のバーティカルファーミング技術を持つスタートアップもいます。その他、北海道の魅力を発信するデンマークの観光系のスタートアップや、インドのトップエンジニアと日本の学生を繋げる教育テック系のスタートアップなど、多様な分野の起業家が活動しています。そして、今後は特に、STARTUP HOKKAIDOでも注力分野として掲げている一次産業・食宇宙環境・エネルギーの3つの分野に焦点を当ててビザ申請者を増やしていく計画です。

「Oslo Innovation Week 2023」の模様


――田中さんがSTARTUP HOKKAIDOに参加される前に自身で立ち上げられたStartup Work株式会社の事業内容について教えていただけますか?

(田中さん)Startup Work株式会社を立ち上げる前は、東京開業ワンストップセンター(TOSBEC)に所属しており、法人設立や事業開始時に必要な行政手続きのサポートを行っていました。特に煩雑な手続きに悩まされることの多い海外起業家の支援を行う中で、起業家と共に一つひとつの課題をクリアしながら起業活動に伴走する必要性を痛感し、独立して自らStartup Work株式会社を立ち上げました。Startup Work株式会社では外国人起業家のサポートを中心に、彼らが日本で会社を設立し、活動を開始する際に直面する法的、社会文化的、言語的な障壁を取り除くことに注力しています。具体的には、法人設立やビザ取得など、海外起業家が日本で事業を開始して軌道に乗せるまでに必要な情報を提供したり、日本で最初の顧客を獲得したり、日本市場で最初の一歩を踏み出す海外スタートアップの伴走支援をしています。クライアントは、ノルウェー、アメリカ、スイス、インドなど多国籍です。


十勝・帯広のスタートアップ・エコシステムの構築に向けたヒント


――北海道の各都市は、北欧の国々からどのような点を学ぶべきとお考えでしょうか?

(田中さん)東京はロンドンやニューヨークのような大都市と競争するポジションにいるものと捉えていますが、札幌は地方都市で、首都が目指すスタートアップ・エコシステムとは異なるアプローチを選択するのに適しています。言わば地域における第二のグループに位置付けられるような、北欧にある中核都市と似た人口規模や気候を有しています。北欧のこれらの都市は経済規模を追い求めるのではなく、地域の循環経済に資する取り組みを行っていることが素晴らしいと考えていますが、エコシステムの構築において北海道内の各都市はこのような方向性を目指すべきではないかと考えています。

「Oslo Innovation Week 2023」でのミートアップイベントの模様


――十勝・帯広のスタートアップ・エコシステムについてはどんな印象をお持ちでしょうか?

(田中さん)十勝・帯広のスタートアップ・エコシステムについては、特に起業家コミュニティが上手く構築されており、外部の人材や組織との協力体制が整っている印象があります。また、とかち財団が運営する帯広市の事業創発支援拠点「LAND」のような組織が、地元企業との良い関係を築いており、欧州スタートアップと地元企業との連携面においても事前に丁寧なコーディネーションを行っていただける点についてはありがたく思っています。

――昨年10月に開催された「十勝アグリ&フードサミット」では田中さんにご登壇いただき、その際に「北海道や十勝の海外への情報発信がまだまだ足りていない」との話がありましたが、具体的にどのような情報が海外では求められているのでしょうか?

(田中さん)これは十勝に限る話ではないのですが、農業や宇宙など、北海道の強みに関する英語の情報が圧倒的に不足しています。北海道は他の日本の地域とはどのように異なる特性を持っているか、北海道と本州の農業はどう違うのか、グローバル展開の一歩目の場所としてなぜ北海道を選ぶべきなのか、データとして示せる情報を十分に発信できていません。地域情報の言語化と積極的な情報発信を多く行っていくことにより、活発化する北海道のスタートアップ・エコシステムへの注目度が高まり、より多くの機会を掴むことができるのではないでしょうか。

「十勝アグリ&フードサミット」の模様



次なる舞台、「Hokkaido Innovation Week」に向けて


――北欧諸国との連携を北海道は進めていますが、現在の連携状況、また今後の連携のあり方として思い描いていることについて教えてもらえますでしょうか?

(田中さん)スタートアップビザを活用している海外スタートアップは、まずは進出1年目で日本での法人設立をようやく終えた段階です。これから実際に日本市場で事業を展開していく中で、今後は北海道のスタートアップコミュニティとの交流を図り、海外投資家を紹介したり交渉術に関して起業家間でノウハウを交換したりといった関係構築ができていくと良いと考えています。道内スタートアップは1度目の資金調達後、2度目の資金調達に苦労することも多いと聞いていますので、そういった道内スタートアップに対して、世界各国でさまざまな取引先や投資家と交渉をしてきた海外スタートアップが貢献できる面は多くあるのではないかと考えています。

――今月末から開催される「Hokkaido Innovation Week」(2024年1月29日〜2月2日開催)について教えてください。

(田中さん)「Hokkaido Innovation Week」は、北海道ならではのプログラムをたくさんご用意しています。私たちの目標は、クレイジーなゴールを追い求めるスタートアップを支えていくコミュニティを構築し、創業日からグローバル市場を目指すスタートアップを生み育てることです。スタートアップが東京に一極集中している状況の中で、北海道はそれとは差別化した戦略を取るべきであり、「信頼ベースのコミュニティ」は北海道だからこそ構築できるものと信じています。
 北海道には、外部からの新たな企業を歓迎し、共に事業を育てていくというスタンスの企業が多い印象があります。以前、欧州のあるスタートアップを道内企業にご紹介した際には、どのような協業の方法が考えられるかを親身にご検討いただき、短期間で契約を交わし、日本で1番目の事業パートナーとしてスタートアップを応援していただきました。互いを大切にする、東京とは異なる人間関係。北海道に親身に向き合ってくれる人を仲間として歓迎し、実際に物事を着地させていく「信頼ベースのコミュニティ」。私たちは前向きな考え方で様々なプロジェクトを支え、共に成長していきたいと考えています。

「TechBBQ Sapporo」の模様


編集後記
田中さんのお話から、スタートアップが活躍する新たな舞台として、他地域との差別化を意識した上で北海道がどのような方向に向かっていくべきかのヒントが得られた気がします。今後の北海道、特に十勝・帯広のスタートアップ・エコシステムの醸成に向け、田中さんが描く北海道の未来像は私たちにとっても新たな発見となっていくのではないでしょうか。
(LAND小田)


LINK

STARTUP HOKKAIDOウェブサイト
Hokkaido Innovation Weekウェブサイト

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


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