十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!
包装資材の販売からパッケージデザイン、商品企画まで一貫して行う株式会社ティーピーパック取締役副社長の齊藤和也さんに、これまでの取組から十勝での新たな事業、地域に貢献することへの思いについてお話を聞きました。
(聞き手:帯広市経済部 浜田)
株式会社ティーピーパック 齊藤 和也さん
プロフィール
齊藤 和也さん(さいとう かずや) 株式会社ティーピーパック(札幌市)取締役副社長・株式会社パックロジ(釧路市)代表取締役
1978年、北海道札幌市生まれ。札幌市内の高校を卒業後、北海学園大学に入学。卒業してからは外資系の保険会社の営業をはじめとして様々な仕事を経験し、2006 年に株式会社ティーピーバックに入社し、道東地域を担当。その後、釧路市に関連会社である株式会社パックロジを設立。現在はパックロジの代表取締役とティーピーパックの副社長を兼務。
ソリューションカンパニーを目指すティーピーパックの強みは自由に動ける人材力
──ティーピーパックの事業内容や齊藤さんの取り組んでいる業務について教えてください。
(齊藤さん)ティーピーパックは包装資材・包装機械を販売している会社なのですが、ただ製品を納めるだけではなく、パッケージ自体の企画提案を行い、デザインも行った上で製品を納めており、包装資材を取り扱う企業としては道内でも数少ない事業内容です。道内外合わせて約700 社ほどのクライアントと取引があります。ティーピーパックは、同業で言うと凸版印刷や大日本印刷などと同じ事業領域に入るのですが、そうした大きな会社と僕らが真正面から競っても、正直あまり勝ち目はありません。そこで僕らは、地方を守っていく「ニッチャー」として、自分たちの事業によって地域の経済を守っていけるような形を目指しています。包装資材という事業ドメインでやってはいるのですが、徐々にソリューションカンパニーという形に変えていこうとしていて、包装資材だけの売り上げよりも、今はそういったパッケージの企画提案・デザインなどのソリューション事業の方が伸びてきていますね。
──全体の売り上げの比率としても、そういったソリューションを提案する事業の方が高くなってきているのでしょうか。
(齊藤さん)売上構成で言うと包装資材が多いですが、クライアントが悩んでいるポイントはやはりそれぞれで違っていて、人手が足りてないという課題もあれば、自社商品の受けが市場であまり良くない等と多岐にわたります。ですから、包装資材だけでなく、そうしたクライアントの様々なニーズに合わせたソリューションの提供も行っているんですね。現在は社内に「食品事業部」を立ち上げ、北海道の食品のブランド強化に貢献できるような取り組みに注力しています。
──包装資材だけではなく、顧客のニーズに柔軟に合わせる会社にシフトしているんですね。そのようなことが可能な背景には何があるのでしょうか。
(齊藤さん)当社では社員の自主的な学びを積極的に後押ししていて、色彩検定やファイナンシャルプランナー、生成AI関連の資格など社員自身の担当業務に関わらず、それぞれの取りたい資格を会社負担で取得できるようにしています。そうして育てた人材に支えられた対応力が我が社の強みになっているんじゃないかと思います。そもそも、組織はどういう状態が一番強いかと考えたときに、私は「外に放たれても活躍できる人材が中に残ってる状態」が一番強いと思うんですよ。そうするためには、それぞれの社員に大きな権限や裁量を委ねなければならないわけです。最低限のルールだけを作って、あとは自らの裁量で働き、その成果を持ち帰ってきてもらう、というスタンスでやっています。そうすると、社員一人一人もやりがいを持って働けるし、人間関係で悩むこともあまりないんですね。
──なるほど、人材育成に力を注いでいるからこそ、クライアントのニーズに柔軟に応えることができ、社員の皆さん自身にも自由な裁量で働いてもらうことができる、ということですね。
十勝への参入を通じて感じた、地域から求められる「推進力」
──御社は2021年頃から「北海道フードネットワークプロジェクト」※への参画を通じて十勝での事業を展開されていますが、参入のきっかけとしてはどのようなことがあったのでしょうか。
※道内の食品事業者や十勝管内の企業、JAなどが集まり、十勝産食材を使った加工商品の企画・販路開拓を促進する取組。事務局:帯広物産協会。
(齊藤さん)実は、ティーピーパックは数年前まで北海道の中で十勝だけは事業参入できていなかったのですが、帯広物産協会の木戸事務局長との出会いがきっかけとなり、一緒にお仕事をさせていただくこととなりました。当社の仕事の中で、プロジェクトの中心となって物事を調整する姿勢や情熱を特に評価していただき、その後も継続して一緒に仕事をさせてもらうこととなりました。
その経験から思ったのが、「推進力」のある民間企業がいないと、新規事業や事業連携はなかなかうまくいかないんですね。何かをつくる能力はあっても進める力はまた別問題で、推進力のある人がいなければ、どんなに場所や機会を提供してもやっぱり事業は進まないと僕は思っているんですよ。極端に言えば、プランは5%くらいでよくて、95%の熱量があれば大丈夫だと思っています。
(齊藤さん)先ほど言ったような経緯で十勝での事業が始まったのですが、もう少し広く十勝の事業者との事業連携を行いたいというビジョンが浮かんできていて、プロジェクト単位での事業者間の連携を図るために組織された「北海道フードネットワークプロジェクト」に参画しました。このプロジェクトを通じて2021年からの3年間で80商品に携わることになったのですが、その中で普通だったらあり得ないような、業種の垣根を超えた連携を経験してきました。市場が狭まってきている日本では、それぞれの事業者の良いところをうまく取り入れながら事業を進めていかなければならなくて、これまで業界で取り組んでこなかったことや、関わりの無かった異業種との連携など、新たな挑戦が必要になってきていると思います。
──広域の事業連携プロジェクトで80商品を市場に送り出した推進力はすごいですね。いずれの商品にも共通して、その商品の中身がわかりやすいパッケージとの印象を受けるのですが、パッケージデザインに関するこだわりなどはありますか?
(齊藤さん)やっぱりまずはその商品を食べてみないと始まらないですね。あとはその商品を売る場所が重要になってきます。コンビニで売るのか、道の駅で売るのか、スーパーで売るのか、それによってターゲットが全然違ってくるわけです。そこで手に取ってもらえるものじゃなきゃいけない。だから、かっこいいパッケージデザインが売れるデザインかと言われればそうではなくて、例えば北海道のものを東京の有楽町で売るというときに、現代風なパッケージデザインよりは、真っ白な背景に筆文字で書いてあるだけだったり、例えば「JA〇〇・〇〇監修」などと書いてあった方がよっぽど手に取るわけです。だから、その場合に売れるデザインを考えると、かっこ良さより押し出したい内容が主になるんですよ。
ティーピーパック社が手掛けた商品パッケージや包装資材
地域に支えられた恩は地域に返したい。地域に還元できる企業を目指して。
──2024年4月に音更町にオープンしたコワーキングスペース「ひがし北海道BASE」について、お聞かせいただけますか。
(齊藤さん)先ほど「北海道フードネットワークプロジェクト」のお話をしましたが、十勝の垣根を越えてより広域に、異業種間で気軽に集まって事業連携できるような「集える場」をつくりたいなと思い、音更町内にコワーキングスペース「ひがし北海道BASE TOKACHI」をオープンしました。この場所はティーピーパックの関連会社であるパックロジが運営し、木野の森珈琲店内に開設しており、会議室とコワーキングスペースがあります。基本的には会員制で、会員の方は自由に利用することができます。この場所が十勝に出張してくる人たちが一時的に休むことができる場となり、その中での事業連携の事例が増えていけば、またそこに別の事業者が入ってくるという風に良い循環ができれば良いなと考えています。
釧路にパックロジという会社を作ったのも、釧路に恩返しをしたかったからというのが結局は一番大きな理由なんです。元々、自分が営業時代にお世話になった釧路エリアの地域活性化のお手伝いが出来ればと思いパックロジを設立し、今では福祉関連の取組も見据えています。地元が私たちに投資してくれたからこそ現在のような事業展開ができているので、私たちの方からも何かお返しがしたかったんですね。十勝ではフードネットワークプロジェクトでお世話になっているので、将来的には帯広で会社を作れれば、なんてことも考えています。
ひがし北海道BASE TOKACHI
──十勝での構想もお聞かせいただきありがとうございます。開設いただいた拠点を通じて我々もぜひ事業連携させていただければと思います。最後に、十勝、もしくは十勝の起業家の方々に対するメッセージをいただきたいです。
(齊藤さん)十勝には本当にいろいろな宝物が眠っていると思います。それを活用して企業の成長につなげていくことができれば、まだまだ伸びしろがあると思います。十勝の中だけでも大きなビジネスがまだまだ埋まってると思っているので、宝物探しに旅に出ているような気持ちで探していただいて、ぜひ掘り当ててほしいなと思っております。その中で重要だと思うのが、市場の状況を読み取って商品にいかに付加価値をつけて売ることができるかということだと思います。十勝の商品に新たな価値を付けるために、様々な工夫を考えていくという点で当社からもお手伝いをさせていただきたいと思っています。
編集後記
株式会社ティーピーパック取締役副社長を務める齊藤和也さんにお話を伺った今回の「LANDSCAPE」では、ティーピーパック流の事業への向き合い方や働き方、「ひがし北海道BASE」を設立したねらいについてお話を伺うことができました。ビジネスで大事なのは計画よりも熱意であると、情熱を重視している齊藤さん。利益だけではなく、そのビジネスがもたらす意義や地域への貢献を重要視する姿勢が垣間見えました。これからもティーピーパック、パックロジの今後の展開に注目し、応援していきます。
(帯広市経済部 浜田)
LINK
株式会社ティーピーパック ウェブサイト
株式会社パックロジ ウェブサイト
ひがし北海道BASE ウェブサイト
協力
帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会
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