北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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tokachi field action Lab

山内 一成さん

#29「十勝×学生で地域と若者を刺激する!未来に種をまくプロジェクト!」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LAND企業研究部」!
今回は、十勝・帯広の企業と地域内外の学生を”たすき掛け”し、学生と地域の「関わりしろ(関係人口が地域と関わるきっかけとなる余白)」を生み出すプラットフォーム「tokachi field action Lab」を運営する、会長の山内さんにお話を伺いました!

tokachi field action Lab 山内 一成さん

プロフィール
山内 一成さん(やまうち かずなり)

三重県出身。東京の大学生時に帯広の農業インターンに参加。ベンチャーや大企業にて人材育成等に従事しながら、2016 年にTASUKI有限責任事業組合を起業。
その後帯広へ「地域おこし企業人」として移住。「都市と農村にタスキをかけ、次世代にタスキをつなぐ」をミッションに、十勝の農家・企業と全国の大学生をつなげ双方を育むインターンの企画運営を軸にした事業を展開。
2018年からは、同事業を発展させる形で「tokachi field action Lab(とかちフィールドアクションラボ)」を設立。全国の大学生がtokachi field action Labと連携する十勝企業の課題解決を行うプログラムの運営を行っている。

域外の学生と十勝の企業が共に成長・発展できる関係づくり!学生に選ばれる「関りしろ」を見せていく!


――tokachi field action Lab(とかちフィールドアクションラボ)について教えて下さい。

(山内さん)tokachi field action Lab(以下、Lab) は十勝地域との「関係人口」を増やして行く事を目的に、民間と行政のメンバーで立ち上げた協議会です。十勝について学ぶスタディツアーや、農業インターンシップなどの取り組みを通じて「域外の学生と十勝の企業をつなぐプラットフォーム」になり、十勝・帯広の魅力と他地域の魅力を掛け合わせることで、参加者と地域のお互いが、持続的な成長・発展を可能とする関係構築に取り組んでいます。

―――全国的に地方に若者を呼び込む動きが活発だと思います。Labを運営するうえで感じる十勝の特徴は何でしょうか?

(山内さん)ここ十勝の一番面白いところは産業の生態系が独特なところです。地域によって盛んな産業があるのは勿論ですが、同一地域内で関連性のある企業が存在し、一体感があるというところが他に無い特別なものだと考えています。例えば、基幹産業である農業などの一次産業があって、農機具メーカーや畑の観光ガイドといった二次・三次産業が近場にある産業集積がなされています。十勝全体でホールディングスのような一体感がありますよね。皆がそれぞれ関連性を持っています。
 スウェーデンの研究者が発表したSDGsのウエディングケーキモデル(下図)と呼ばれる図を見てみると実感が湧くと思います。十勝はケーキの土台にあたる「資源と環境」が大きく、中上段の「社会・経済」と密接に関わり合っていることがわかると思います。私たちの活動では、中段に当たる「地域コミュニティ」の中へ域外の若者を呼び込む入り口として、それぞれが関る機会を提供しています。

SDGsのウエディングケーキモデル 出展:農林水産省HP


―――山内さんの取り組みは、もともと農業インターンシップからスタートされていますよね。「農業×若者」から「十勝の企業×若者」と裾野を広げていった経緯をお聞きかせください。

(山内さん)私たちが実施している農業インターンシッププログラムは「ネイチャーダイブプログラム」、「アグリダイブプログラム」という、全国の若者と十勝の農家をつなぎ、農作業と共同生活を通して人材育成を図る約1~2週間のプログラムです。
 自然と直接触れ合い、農作物を育てる苦労を肌身で感じられる農業は、作物だけでなく人を育てる最高のフィールドで、2000年にスタートしてからこれまで1,500名以上に参加していただきました。
 一方で、農業インターンシップは収穫の時期に合わせた期間限定のプログラムのため、受け入れできない期間があります。この受け入れできない時期に、他の事業をどう実施するのかがポイントになりました。そこで、十勝の企業と全国の学生をつないで一緒にチャレンジする産官学連携プラットフォーム「tokachi field action Lab」の運営を始めたというのがまず一つです。
 次に、先ほどお話したように十勝が各産業の関連性が高い地域というのも理由です。農業インターンシップに参加するような学生を、農業に関連性の高い管内企業とも繋げたら双方に刺激をもたらすと感じていましたし、地域おこし企業人として得た帯広市との繋がりを活かし、管内企業にも取り組みを説明し協力者を増やしていきました。今では実際に「tokachi field action Lab」のプログラムを通じて、複数回十勝とかかわっていく中で関係性が自然と深まり、納得感のある就職が管内企業で成された事例も生まれています。

――山内さんが北海道の中でも十勝と強く繋がった理由はなんでしょうか。

(山内さん)きっかけは、大学在学中に、人材開発系のベンチャー企業で「北海道農業インターンシップ」の立ち上げをお手伝いしたのが原点で、その受け入れ農家さんが十勝帯広の方で、それがご縁の始まりでした。その後、就職してからもしばらく農業インターンの受入農家さんと学生をつなぐコーディネーターとして農業に関わり続けていました。
 ところが、所属先の会社の経営が悪化し、事業の継続が難しくなってしまったことから、一念発起して起業し、自分で事業をやる決意をしました。
 今では、冬期に3泊4日で十勝について学ぶスタディツアーを実施して十勝という地域に興味を持ってもらい、夏に再び農業インターンシップで十勝に来てもらって実際の生産現場を回るなど、一過性で終わらせないプログラム運営をしています。
 東京の西小山にあるCraft Village NISHIKOYAMAでは農業インターンシップのアフターセッションとして、十勝から戻ってきた後に、議論やアイデア出しなどを行っています。この継続した取り組みが、より十勝に興味を持って頂くアクセルとして働いています。
 昨年(2022年)、とかち財団が主催で北海道宇宙サミットと同日開催された「十勝アグリ&フードサミット」では北海道・関東・関西、南は九州まで、6つの大学の学生が十勝に来て参加してくれました。すべてtokachi field action Labの取り組みだけで繋がったわけではなくて、他の事業や目的で十勝に来た学生から芋づる式に関係の輪が広がっている感じです。「十勝って面白いよ!」という経験者の声に確かな熱量があるので、他の若者は「じゃあ行ってみるか!」となるんですよね。

――人間関係について、都市は比較的希薄で、地方は濃密なイメージです。参加される学生の中で、濃い繋がりというのは受け入れやすいものでしょうか。

(山内さん)逆に濃い繋がりを求めてきていますよ。首都圏で比較的希薄なコミュニティに属しているからこそ、十勝の相互扶助とまでは言わないですけど、支え合い、切磋琢磨し合う環境に魅了されるのでしょうね。参加者の中には、何かに思い悩んでいたり、生きづらさを抱えていたりする人もいますが、大自然の中で感受性が豊かになる農業だからこそ、プログラムが進むにつれて次第に周囲と打ち解け、自分の考えを積極的に発信できるようになるケースが非常に多いです。面白いもので、そうした変化は見た目にも顕著に表れるんですよ。笑顔が増えたり目の輝きが増したり、表情がどんどん豊かになっていく様子を見守るのは、こちらとしても嬉しいことです。
 こういった取り組みを続けてきて、面白い学生が十勝に来るというのがブランドとして確立されつつあります。

学生に教えるのではなく、学び気付き合える関係を構築する!


――tokachi field action Labは今後どういったアクションをしていきますか。

(山内さん)管内企業に対して、域外の学生と活動できるプラットフォームとして、より認知されていきたいですね。企業が出した課題や案件に対して、学生が企業の予想を超える提案や解決策を出していくことが自然と起きるようになれば嬉しいです。
 学生側でいうと、産業能率大学の倉田教授のゼミでは、取り組みの一つとして地域創生活動「十勝帯広地域との交流」があり、このゼミ活動では「都会の自由が丘にある大学だからこそできること」、それを強みとしてさらに、「農業系ではなく経営学を学ぶ学生だからこそできること」を常に念頭に入れて、「これらの強みをどのように地域との交流に生かすか、常に意識しよう」ということを重視してくれています。農業分野を超えて、食品関連ビジネスなど地元有力企業との交流にまで広がりつつありますし、産業能率大学では、優秀で行動力のある学生にとって人気のゼミとなっているようです。そして、後輩にも継承されていくので十勝というフィールドで活動することが目標の一つとなって更に学生のモチベーションが高まるという好循環となっています。
 十勝地域の企業と、そこに来る学生の両方が高め合えるような関係性を作っていけたらいいですね。


Labの活動のひとコマ:企業との意見交換


――プログラムを経て若者が十勝にどう関わっていくことを目指してしていますか?

(山内さん)参加した若者が今後「十勝×○○」で関わっていく可能性を最大化することがゴールです。十勝で就職してほしいとか、住んでほしいとかではないんです。あらゆる選択肢を持つ学生が、今後歩みを進めた先で、十勝に関わる「○○(その学生ごとの何か)」で少しでも関わってくれればうれしいですね。2003年頃に出会った学生は、現在総合商社で働いていて、海外で得た知見を十勝で講演していました。こうした場面が多くなればいいと思っています。
 一方で、学生を受け入れる企業も増やしつつ、形骸化しない取り組みとしていく必要があります。課題や質を担保することが今後重要になってきますし、若者を消費するだけという誤解を与えないように、気を付けなければなりません。企業と若者を繋ぐタイミングや、企業が出す課題に対して一緒に学生と悩む伴走できる人も増やしていきたいと考えています。
 この取り組みを通して、新しい業種や分野の組み合わせが出来ることによって、100の仕事を繋いだり作れたらいいですね。そのためには、一緒に取り組む仲間も増やしていきたいです。


とかち財団主催十勝アグリ&フードサミットでのひとコマ:域外学生達が等身大の想いを発表する


編集後記
「学べば学ぶほど、自分が何も知らなかった事に気づく。気づけば気づくほどまた学びたくなる」それまでの物理学の認識を根本から変え、「20世紀最高の物理学者」とも評されるアルベルト・アインシュタインの言葉です。山内さんのお話を聞くと、十勝で地域と触れ合った学生がどんどん前のめりになって十勝に関わり続けていくために、「関りしろ」を繊細かつ丁寧に提供している印象を受けました。山内さんの笑顔からは、学生が持つ未来への可能性と、十勝での未知なる可能性についてタネを蒔いていく楽しさや使命感をひしひしと感じました。そんな山内さんを私たちはこれからも応援していきます!


LINK

・tokachi field action Lab(Facebook)
Facebook

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


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