北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

  1. ホーム
  2. 発見する!
  3. ライフ/カルチャー
1256

株式会社ciokay

森 健太さん

#28「浦幌町の町花“ハマナス”の花びらを活用し、地域一丸となって作り上げた地域コスメ” rosa rugosa(ロサ・ルゴサ)”」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

今回は、浦幌町でハマナス(学名:Rosa rugosa)を軸にしたコスメ商品の開発・販売に取り組む株式会社ciokay森さんにお話を伺いました。

株式会社ciokay 森 健太さん

プロフィール
森 健太さん(もり けんた) 株式会社ciokay 代表取締役

1994年三重県亀山市生まれ。大学卒業後、浦幌町の地域おこし協力隊として浦幌町に移住。うらほろスタイルの「若者のしごと創造事業」の一環で浦幌町の “ハマナス”を使った地域コスメの商品開発に取り組む。2017年に株式会社ciokay代表取締役に就任。

住み慣れた地域を離れて浦幌へ移住!地域おこし協力隊から経営者へ


――森さんは大学卒業後、地域おこし協力隊として浦幌に移住されていますが、住み慣れた地域を離れて浦幌町に移住することに対して不安などはありましたか?また浦幌町に移住しようと決意したきっかけなどがあれば教えてください。

(森さん)私は大学時代から他地域に1ヶ月ほど住み込みで働くような活動もしていたので浦幌町に移住することに心理的ハードルはそこまで高くはありませんでした。
それに大学時代から地方で働くことに興味があり、大学のスタディツアーで浦幌町に来ていたこともあります。その時知り合った方から浦幌町の地域おこし協力隊のお話をいただきましたが、移住先の選定は重要です。私は移住するにあたって、どこの地域が良いかではなく、その地域でどんな取り組みをしているのかがとても大切だと考えていて、浦幌町では地域の子どもたちや町の未来のために”うらほろスタイル”という取り組みが続いていることが決め手でした。私にとってそのような活気のある町で働くことがとても楽しそうに感じて、浦幌に移住を決意しました。

――森さんは地域おこし協力隊として活動しながら起業をされたわけですが、起業するにあたって不安などもたくさんあったかと思います。そのような不安をどのようにして乗り越えて起業という一歩を踏み出せたのでしょうか?

(森さん)私が周りの方から起業についてお話をいただいたのは、大学を卒業して地域おこし協力隊になった1年目の12月でした(笑)。
当時はビジネスのことなど何もわかりませんでしたし、名刺の渡し方すら知らない新卒の私が起業なんてできるのかと、正直不安でした。1週間ほど時間をもらい、どうしようか悩んだのですが、答えは出ませんでしたし、1週間悩んでも2週間悩んでも答えはわからないなと思いました。それであれば、やらないで後悔するより、やってみて後悔した方が経験にも繋がると考え、一歩踏み出すことを決意しました。やらないという選択肢を選ぶのはすごく簡単だと思うんですよね。でも挑戦するからこそ得られる経験があると私は思いますので起業を決意したわけです。
でも、私一人では到底起業はできなかったと思います。なんといっても地域の方々に支えていただいて今の自分があると思っています。


地域一丸となって作り上げたハマナスコスメ「rosa rugosa(ロサ・ルゴサ)」



――株式会社ciokayで販売されている商品「rosa rugosa」を作ることになった経緯を教えてください。

(森さん)この商品はうらほろスタイルのプロジェクトの中から始まったもので、私が浦幌に移住する1年前からうらほろスタイル推進地域協議会で取り組んでいた「若者の仕事創造事業」で様々な企画案の一つとして出ていました。具体的にはハマナスを使った仕事作りという地元の中学生が発案した企画で、町の花に選ばれているハマナスに着目し、ハマナスを使って地域を活性化させたいという思いがベースになっています。私はこの企画を形にするべく、地域おこし協力隊として浦幌に移住してすぐに動き出すことになりました。


――ハマナスの花を使った企画案が出ていたということですが、なぜハマナスを使った“化粧品”を作ろうと思ったのでしょうか?

(森さん)すでに私の前任者がハマナスを使ったハーブティーやお菓子などの商品開発を行なっていました。実はその時から化粧品にもいいのではという企画案も出ていたそうなのですが、その時はまだ抽象的でしたので私がその企画案を引き継ぎ、化粧品開発に挑戦することになりました。


――森さんは化粧品の知識が全くなかったとのことですが、化粧品の開発にあたり、大変だったことや努力したことはありますでしょうか?

(森さん)正直大変なことばかりでしたね(笑)。そもそも私は化粧品をつけたこともなければ、乳液と美容液の違いもよくわかっていないほど化粧品について知識や経験がありませんでした。そのため、まずはとにかく化粧品について猛勉強をしました。あと実際にたくさんの化粧品を自分で試したりもして少しずつ知識と経験を積み重ねながら、自分たちが作る化粧品はどういったものがいいのかを考えていきました。


――現在販売されている「rosa rugosa(ロサ・ルゴサ)」はどのようにして開発を進めていったのでしょうか?

(森さん)商品開発をする上で、私の場合は一人で考えるのではなく、町内の女性の方にご協力いただいて、定期的に集まってもらう会議体を作り、町内の女性の皆さんと一緒に商品のコンセプトや使用感、香りなどを考えていきました。商品の方向性が決まればOEM先に試作品を作ってもらい、サンプルができれば実際にみんなで使ってみて、また意見をもらっては次のサンプルを作るということを1年半くらい続けました。
また、開発と並行してハマナスの栽培にも取り組みました。浦幌町の海岸線にはハマナスが自生しているのですが、環境省の保護区であったりもするため、自由に採取することができません。栽培は業者に植栽をお願いするのではなく、町の植樹イベントとして、地域住民の方々にご協力をいただきながら2年間開催しました。2年間で述べ300名もの方にご協力をいただきながら植えた1,400本ものハマナスは現在も綺麗な花を咲かせています。私はこのように、地域の方々にたくさん協力してもらいハマナスの栽培と商品の開発を行ってきました。


「rosa rugosa」を町内だけにとどまらず、全国、世界へ広げていきたい


――現在「rosa rugosa」はどのような場所でお取り扱いされていますか?また、どのようにして販路を拡大させていきましたか?

(森さん)日本全国の百貨店やオーガニック専門店など、約110店舗ほどでお取り扱いいただいています。日本国内だけでなく、現在は香港、台湾、アメリカなど海外にも展開しています。
初めのうちは実績や人脈がありませんでしたが、この商品を町外、道外に広めていきたいという目標があったため、まずはテスト販売も兼ねて展示会などに積極的に出展し、賞などをいただくなどして少しずつ実績を積んでいきました。そして、そのような展示会で多くの方と名刺交換をして人脈を増やしながら販路を拡大させていきました。


――海外でも販売されているとのことですが、海外での反響はいかがですか?

(森さん)海外での販売については、国内で通用していた方法では売れないなと実感しています。海外はただ販売すればいいというわけではなく、営業活動や販促活動をその国に合ったやり方で行う必要があることを学びました。特に海外の代理店とは上手にお付き合いすることがとても大切だと感じています。当初、海外に商品を販売した時は、代理店を通さずに海外の店舗とやり取りをしていました。そのため、輸出に関わる手続きを全て自前でやり繰りする手間暇が大変だったのを今でもよく覚えています。そういった手続きにたくさんの時間をかけたからといって売り上げが伸びるわけではないので、今後は上手に代理店を活用しながら販促活動にリソースを集中していきたいと考えています。


――他社の製品でも化粧品は数多く存在する中で、御社が開発した「rosa rugosa」と他社製品との差別化ができる特徴はどのようなところでしょうか?

(森さん)最大の特徴は、やはり私たちが生産から販売まで一貫しているところです。現在販売されている数多くの化粧品は、私たちのように原料生産から販売までを一貫して行っているケースは非常に少ないと思います。生産に携わっているからこそ、その時々の植物が持つ特徴や花の香りなど、全てをお客様へお伝えすることができます。そういった生産者としての強みを活かしながら、「ハマナスといえば浦幌だよね」とイメージを持ってもらえるようにもっと認知度を上げていきたいと思っています。そうすることで、浦幌町に関わる方が増えて恩返しになれば嬉しいです。


今後の展望と森さんからのメッセージ


――今後、取り組んでいきたいことや展望などがあれば教えてください。

(森さん)よくビジネスの話で「0から1を作る」という言葉を耳にしますが、現状私たちは0から1を作るステージを終わったのかなと思っています。今後はその作り上げた1を10にどのようにしていくかを考えていく必要があります。そうは言っても1人でやるにはもちろん限界があるので、継続的に成長していくためにも人材確保や育成の部分も含めて、今後は会社の体制づくりをきちんとしていき、地域に根差した会社として、地域の子どもたちの働き先の1つになれるよう今後も活動していきたいです。


――最後に、これから起業したいと考えている読者に何かメッセージをいただけますでしょうか。

(森さん)私も始めは知識も人脈もない中で始めました。もちろん地域の方々に支えていただいたからこそ起業できましたが、これから起業しようと考えている方も、失敗を恐れずにまずは小さくてもいいから一歩踏み出してみてほしいです。失敗を恐れて始められず後悔するくらいなら、一歩踏み出して後悔した方が絶対に今後につながります。ぜひ皆さんも恐れず一歩踏み出してほしいです。

浦幌町を拠点としてハマナスの生産、販売に取り組み、町内に限らず全国、さらには海外へと展開を進める森さん。0から1を作り出す大変さとそれを成し遂げるための不断の努力に裏打ちされた強い想いを感じる取材でした。
お話の節々に地域の多くの方に支えられ今の自分があるという感謝が織り交ざる森さんですが、森さんだからこそ周りの人が協力し、支え合う機運が醸成されているのだと思いました。
そんな森さんの活動をLANDは今後も応援していきます。


LINK

・株式会社ciokayリンク
Instagram
Facebook
Pinterest

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


お問合せ

この記事に関するお問合せはLANDまでお気軽にどうぞ!

関連記事

↑ページ先頭へ