十勝の事業創発につながる企業の取り組みをLANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!
今回は、十勝の芽室町で4代続く街の金物屋さん「三浦商店」の代表三浦啓太郎さんを取材しました。
株式会社三浦商店 三浦 啓太郎さん
プロフィール
三浦 啓太郎さん(みうら けいたろう) 株式会社三浦商店四代目代表取締役北海道芽室町生まれ。趣味はドローンレース、ドラム演奏、バイク。北海道情報大学でICT(情報通信技術)を学んだ後、様々な職を経て先代の後を継ぐ決意。持ち前の多芸多才を生かして多岐にわたる事業を展開。カメラマンやドローンパイロットとしての技能を活かし、先代から受け継がれた地域密着型の事業の継続だけでなく、ICTやドローンを使った最新の技術を用いた様々なサービスを地域に貢献できるような形で多角的に展開。2022年からはドローンスクールを開講するなど、次世代の社会を見据えて精力的に活動中。
――三浦さんは大変沢山の事業を展開されていると伺いました。三浦商店のホームページを見るだけでも、灯油配送、金物・生活雑貨販売、自転車の修理・販売、3Dプリンタ、映像制作にドローン撮影など、大変幅広く事業展開されていますね。まず、現在三浦さんが一番力を入れている事業について教えていただけますか?
(三浦さん)今私が一番力をいれているのはドローン事業ですね。私自身ドローンが好きなのもあり、2022年にドローンスクールを開校し、今はそのスクールでドローンの国家資格が取得できるよう整備を進めている所です。これから全国でドローンパイロットのニーズは高まっていくと考えており、スクールだけでなく商材としてもドローンがどこまで広がるのか試している段階です。私は特にドローンのFPV※というジャンルが好きで、自分で組立てたドローンを飛ばしてスピードを競う全国大会に出ています。
※FPV:「First Person View」の略で「一人称視点」の意味。従来のドローンは、地上から空を見上げて操縦を行うが、FPVドローンはゴーグル型のディスプレイを装着し、ドローンに備わっているカメラから送られるリアルタイムの映像を確認しながら操縦するためまるでドローン本体に乗っているかのような臨場感のある飛行が可能となる。
──三浦さん自身がドローンパイロットなんですね!スピードを競う競技とはどのようなものか詳しく教えてもらってもよろしいですか?(笑)
(三浦さん)専用のゴーグルをかけて、ドローン視点で機体を飛ばして速さを競うんですが、それがすごく楽しいんです。体感で150~200キロ位の速さです。この機体は販売されているパーツを使って作ったのですが、素材はカーボンで、三浦商店にはカーボンを切る機械もあるので、今はパーツから全部自分で作成しようとしてます。3Dプリンターもあるので、必要なパーツは印刷して作ることもできます。
今後自分でもレースを主催したいと考えてはいるですが、かなり広い土地が必要になるので、芽室町と連携して廃校になった小学校などを活用させていただき、町おこしの一環として開催できないかと構想を膨らませています。
──ドローンスクールで開講しようとされている国家資格というのはどのようなものなのでしょうか?
(三浦さん)車でイメージしていただくとわかりやすいですが、車で言う普通免許が、ドローンの国家資格にあたります。具体的には目視外飛行や人口密集地域での飛行をするための資格で、今後配送や調査などで使われていくであろうドローンの操縦スキルがあることを公に証明するものになります。加えて、車だと大型特殊免許のように、車両の種類に応じてそれぞれの免許がありますよね。それと同じように飛ばし方の違うドローンがたくさんあるので、それぞれに特化したスクールを展開しようと考えています。
──ドローン事業以外のことも教えてください。三浦さんの代で広げられた事業も多いと思いますが、脈々と受け継がれてきた「三浦商店」の事業にはどれくらい関わられているのでしょうか。
(三浦さん)代々続いている三浦商店の主たる事業は、まちのホームセンターや便利屋さんといったところですが、先代である74歳の父がまだまだ元気なので、経理関係やバックグラウンドでのサポートとして関わっている程度ですね。父が元気なうちにそれ以外の新しい事業を拡げさせてもらっています。
──三浦商店では芽室町内の灯油の配送なども行っていると伺いました。
(三浦さん)灯油配送は三浦商店の主な仕事の一つですが、課題も抱えています。今は今年60歳になる灯油配送担当の方が、手書きの台帳や記憶を頼りに配送先を管理しています。お客さんをすべて覚えて、「このお客さんはこの時期に灯油を入れたから、次はこのくらいの時期かな」と予想を立てながらやっているので、従来のやり方では他の人に引継ぐことができないんです。なので今、「ものづくり補助金」を活用して誰でもできるようにする仕組みを作っている最中なんです。具体的には灯油配送情報のDX化と商店の在庫管理のシステム化を進めています。 田舎の商店ならではなんですが、口約束の掛け売りもしていて、お客さんが「これ持ってくよ」と言って商品を持っていって後で払う、なんてこともあるんですね。そういった取引の仕方でも管理することができるように、顔認証機能のあるカメラを使って、どのお客さんがどの商品を持っていったかをわかるようにするなど、ローカルの良さも残したDXができないか検討している所です。
──長年の取引形態にも対応したDXは実に三浦商店らしい改善ですね。三浦商店では他にもキャンプフィールド事業として十勝・清水町の旭山地区にあるキャンプ場「遊び小屋コニファー」を引き継いだそうですが、それはどういうきっかけだったんでしょうか。
(三浦さん)それは、もともと三浦商店で働いていたスタッフから三浦商店を辞めて「キャンプ」の事業がしたい相談を受けまして、こちらからお金を出すので法人化しないかと提案して『キャンプラボ』を設立したのですが、たまたま「コニファー」の前のオーナーから提案いただき「コニファー」のキャンプ場内で開業したんです。そこからおよそ3年後にキャンプ場自体の事業継承を提案され、三浦商店で買い取ったという流れですね。「ご縁」を大事にしたいなと思い引き継ぐことにしました。
──それ以外に取り組まれている事業はありますか?
(三浦さん)ほかには芽室町のふるさと納税のパッケージング事業もやらせていただいています。出品のお手伝いや商品開発に携わっています。その際の商品撮影も、私どもで立ち上げた映像会社「ラビッツ」でやっていたのですが、今はその会社は解散し、三浦商店の映像部門という形でふるさと納税の商品撮影以外にも映像制作などの事業を行っています。
──先ほどドローン事業の説明の際に出てきた3Dプリンターはドローン事業のみ使用しているのですか?それとも貸し出しなどもしているのでしょうか。
(三浦さん)ドローンきっかけで購入した3Ⅾプリンターですが、人物をスキャンして造形することも可能なので、こちらも事業化を検討中です。それ以外にもA1の大判プリンターも所有していまして印刷事業も展開しています。芽室町には印刷事業者がいなかったので、商工会の青年部でイベントをする際など、どうしても地域外に外注する事になりお金がかかっていたので、町内でできるようにしようと思い、大判プリンターを購入したのがきっかけです。 他には個人としての活動ですが、札幌のスタートアップ企業「Flyers」のドローン飛行申請代行サービスに携わっていたり、不動産経営をしたりしていますが、これで私が取り組んでいる事の全てになりますね。
──驚くほどの多角経営! 三浦商店はなんでもできますね (笑)。
──三浦商店の創業時は豆腐店だったそうですね。
(三浦さん)そうらしいですね。自分も初めて聞かされた時はびっくりしました(笑)。
──そこから、代が替わるごとに少しずつ事業を増やしていったとの事ですが、やはり三浦(啓太郎)さんの代でかなり増えたのではないでしょうか。
(三浦さん)そうですね。ガラッと様変わりしたと思います。ですが、今まで父のやってきたことがあって、そこに自分のできることをただ付け足させてもらっていたという感じなので、逆に父が引退したときには父がつないできた事業をどうやって残していくかが不安ですし課題ですね。
──その際に、従来の三浦商店としての事業の方を縮小するという選択肢もあるとは思うのですが、それについてはどうお考えですか。
(三浦さん)そのように考えたこともありましたが、芽室町の色々な方々から話を聞いていると、三浦商店とまちとの関わりについてすごく「いい話」を耳にすることがあるので、やはり残していくべきだなと思っていますね。今は幸い官庁関係のお仕事もいただいていて、安定しているという点もありますが、それも含めて引き継がれてきた「三浦商店」としての仕事が1番の軸だな、という風に考えています。
──受け継がれてきた業務のDX化も進められていますが、それには三浦さんが北海道情報大学で学ばれたことが大きく影響されているのでしょうか。
(三浦さん)そうですね。ですが、もともとパソコンが好きで、中学校から自分でいじっていたのが根源かもしれないですね。独学で学んでいたことを生かすために情報大に進みましたが、今自分がこんなことしているとは全く思えない、ごく普通の大学生でしたね。
──大学卒業後は何をなさっていたのですか?
(三浦さん)北海道スバルに就職して丸3年営業マンとして働きました。そこから札幌のリフォーム会社の営業マンを経て、日本酒バーの経営もしていました。その後、父が体調を崩したのをきっかけに三浦商店に戻ってきたんです。
──これまで説明していただいた事業は、全てその時点から始めた事業なんですね。
(三浦さん)そうですね。何よりのターニングポイントは、離婚して鬱になったことですね。そこから人生観がガラッと変わったのが大きいと思います。人生一度きりだし、できることやらないとダメだな、と思ったんですね。そこから自分は「イエスマン」になると決めて、持ち掛けられたお仕事を断らずにできる限りやって、できるかできないかを決めるのは自分じゃなくて、周りの方々に評価してもらおう、というスタンスでやってきました。その結果キャンプラボや映像制作会社、ふるさと納税の事業をご縁でやらせていただくことになっていったという感じです。
──先代であるお父様とは事業を広げることについて衝突したりされなかったのでしょうか。
(三浦さん)途中まではものすごく抵抗されました(笑)。最近はもう好きにしてくれという感じになってるんですが、半ば呆れられつつも、結果に繋がっている部分は認められてきている感じもあって、父もまだ半々の感情だと思います。
──今それぞれの事業を成長させている途上だと思うのですが、将来的な目標はありますか。
(三浦さん)「三浦商店が芽室にあってよかった」と思われるのが目標ですね。今後もずっとブラッシュアップし続けていくことになるので、辿りつくことはないのかもしれませんが、とにかく、「芽室に三浦商店がある意味」を見つけなければならないと思っています。求められていることに応えつつ、やりたいことをやりながら、しっかりと土台作りをして、三浦商店の事業が芽室の人口を増やすきっかけになればという思いで動いています。最終的には偉人として街に銅像として飾られたいですね(笑)。 芽室は今、若いプレーヤーや、新しいお店、イベントなども増えて盛り上がってきています。芽室の中では既に色々な方と連携していますが、十勝の他の地域の方ともどんどん繋がりを広げて連携していきたいです。
──最後に、現在十勝では引継ぎ先がいないビジネスの行き先が課題となっていますが、その点について、ご自身も先代から会社を引き継がれているほか、「コニファー」の件など、第三者として事業を引継がれた三浦さんから意見をお聞きしたいです。
(三浦さん)私は商工会にも入っていますが、芽室町だけでも後継者問題はかなり深刻なので、それをどう解決できるか自分の中でも課題と捉えています。町内に限らず、事業の需要と供給をうまく結びつけて、ご縁をつなぐことが解決に繋がっていくと思うので、今協力しているチャレンジショップの「MEMURO UNITE BASE(メムロユナイトベース)」などで育った事業者が後継者問題を抱えている人とマッチアップすることで解決に繋がればいいなと思っています。 一方で、うまく繋げられたとしても、自分たち親子間でも事業承継は大変だったのに、他人同士の場合はより難しいだろうなと思います。そんな時に事業承継が上手くいったモデルケースとしていられるよう、これからも三浦商店を続けて相談に乗れる存在でありたいですね。
三浦商店の四代目代表、三浦啓太郎さんに密着した今回の「LANDSCAPE」は、彼の独特な経歴と事業展開に焦点を当てました。北海道芽室町で長年にわたり根づいてきた家業を継ぎ、現代の技術を取り入れながら地域に新たな価値を提供している彼の姿勢は、まさに「まちのなんでも屋さん」の理念を体現。三浦さんの多岐にわたる事業へのアプローチには驚かされるばかりでした。これからも地域の便利屋としての機能を維持しつつ、DX化による効率化と地域密着型のサービスを提供により「芽室に三浦商店があってよかった」という声が広がっていくのが想像できるインタビューでした。三浦商店さんの今後の展開に、引き続き注目し、応援していきます!
帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会
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