北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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株式会社NEXT DELIVERY

畑田 直人さん

#48「ドローン配送実現の最前線!NEXT DELIVERYが切り開く未来の物流 」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!
物流業界におけるドローン活用の最前線で奮闘する、畑田直人さん。ドローンの研究開発スタートアップ企業、株式会社エアロネクストの子会社である「株式会社NEXT DELIVERY」の上士幌拠点長として、ドローンによる配送サービスの実現に向けた日々の挑戦に取り組んでいます。取り扱うのは高付加価値の家畜の受精卵からラーメンやお弁当、新聞など身近なモノまで。実証実験を繰り返し、革新的な分野に身を投じる畑田さんがどのようなビジョンを持っているのかを探ります。

株式会社NEXT DELIVERY 畑田 直人さん

プロフィール
畑田 直人さん(はただ なおと) 上士幌拠点長 

1992年生まれ、31歳。北海道留萌市出身で、高校時代は野球に打ち込みながら北海道栄高校に通い、その後、北海学園大学を卒業。大学卒業後は札幌で社会人としてのキャリアをスタート。飲食店の店長などを務めた後、現在はNEXT DELIVERYにおいて事業グループ 拠点統括チームの上士幌町拠点長を務める。

上士幌町から始まる物流革命: NEXT DELIVERYの挑戦

――NEXT DELIVERYとはどのような会社ですか?

(畑田さん)NEXT DELIVERYは、産業用ドローンの研究開発を行うエアロネクストの戦略子会社です。私たちは、物流特化型ドローンを用いた、安全かつ安心なドローン配送の社会実装に取り組んでいます。全国に8拠点を構え、北海道内では上士幌が唯一の拠点なんですが、ドローン物流への期待も高まっているので、他地域でも動きが活発化しています。

──NEXT DELIVERYはエアロネクストの子会社なんですね、親会社のエアロネクストについて教えてください。

(畑田さん)エアロネクストが目指しているのは、まさに「空」の利用による革命です。代表取締役CEOである田路圭輔の下、鳥のように自由に飛び交うドローンを利用して、地上から150メートルの高さまでの3次元空間を経済圏として整備することを目標にしています。それを実現するために最も重要なのは安全性の確保で、私たちは、頭上をドローンが飛んでいても、誰もが気にすることなく、安心して過ごせる社会を実現したいと考えているんです。

──まさに空の革命ですね。

畑田さん)仰るとおりです。我々は、空に新たな産業革命を起こすことをビジョンに掲げています。これは、私たちが見据える「ドローン前提社会」の実現に向けたもので、ドローンの登場がもたらす社会的インパクトは、かつて自動車がもたらした変革に匹敵すると私たちは確信しています。自動車産業が市場を創出し、雇用を生み出し、社会インフラや法制度にまで影響を与えたように、無人航空機(ドローン)もまた、人々の生活や社会構造に劇的な変化をもたらす可能性があると私たちは見ているのです。
現在の自動車産業の市場規模は約400兆円にも上りますが、ドローンが生み出す新たなエコシステムは、それに匹敵、あるいはそれを超えるインパクトを社会にもたらすと考えているんです。

ドローン配送の可能性と上士幌町での実証実験

──すでに上士幌町で実証実験を行ったと聞いています

(畑田さん)上士幌町は、我々がドローン事業を立ち上げた際に真っ先に声を上げてくれた自治体なんです。 2022年8月、我々は上士幌町とJA上士幌町、そしてJA全農ET研究所の協力のもと、ドローンを活用した牛の受精卵配送の実証実験を行いました。ET研究所で採卵された新鮮な牛の受精卵を、ドローンで町内の熊谷牧場まで配送。この配送は約7.1kmを13分で飛行し、配送後の受精卵は問題なく乳牛に移植されたんです。このプロジェクトは「デジタル田園都市国家構想推進交付金」を活用した取り組みとして大きく報道されました。

──現在、上士幌町におけるNEXT DELIVERYの事業の中心は何ですか?

(畑田さん)私たちの事業の中心は、車の代わりにドローンを活用した新しい形の配送サービスを実現することです。ですが、ドローン配送の社会実装にはまだ課題が多く、特に保証などの面で解決すべき点が山積しているので現在は国土交通省と密にやり取りしながら実証実験を進めている段階です。
そのような状況もあり、現在は将来のドローン配送への移行を視野に入れながらトラックによる陸送の配送事業も並行して行っています。配送事業を開始した当初、私たちには荷物の配送経験がなかったので、まずはどのような荷物を運べるか、どのように新しい価値を提供できるかを模索してきました。ドローン配送への移行を見据え既存の運送事業者で取り扱わないエリアや荷物に着目していますが、現在は主に上士幌町内のスーパーへの配送業務を請け負っています。他には、アスクルとの取引や、上士幌町内には料理のデリバリーサービスをやっている飲食店が無かったのでフードデリバリーのサービスも行っています。

──陸送業も行う事で企業体力を維持しながらドローン実用化に向けた実験を行っているんですね。ドローン配送における法的な課題はありますか?

(畑田さん)はい、ドローン配送には法的な制約があります。現在、私たちは日本で一番高い水準の「3.5レベル」が適合しているので、目視外での飛行が可能な範囲で活動していますが、3.5未満のレベルだと、常に目視できる状態で飛行ルート上のすべての地点(離陸・中間・着陸)に人を配置する必要があるなど、運用にはまだ制約があります。また、「ドローンが飛んでいます」という表記を道路上に設置するなどの安全措置も必要なんですね。
 ドローンが飛行するルートもあらかじめ定めておく必要があり、現在はルートになるエリアにお住まいの方を1軒1軒訪問させていただき許可をいただきながら実験を進めているんです。

ラーメンの配送?!独自技術が可能にするドローン物流

──ドローンによる食べ物の配送実験も行ったそうですね。

(畑田さん)上士幌町のレストラン「tobachi(トバチ)」でのお弁当配送の実験ですね。tobachiは、上士幌町の住宅街から数キロ離れた森の中にあります。そこで調理されたお弁当を上士幌町の住宅街から飛ばしたドローンで集荷し、戻ってくるという実験でした。ドローンはレストランまで飛行し、そこでスタッフ(当社以外の第三者)がお弁当をドローンに搭載。その後、ドローンは再び離陸し、目的地までお弁当を運びました。この過程で、荷物の扱いや輸送中の安定性に特に注意を払い、荷物が安全に配送されるかを検証しました。過去にはラーメンの配送実験も成功させており、スープがこぼれることなく運べることを実証しました。

──スープがこぼれないってすごいですね!

(畑田さん)まさに当社の強みである特許技術によるものです。エアロネクストが開発した4D GRAVITY®という技術で、この技術は、ドローンの飛行中の姿勢や状態に依存しないモーターの回転数の均一化、揚力や抗力、機体重心のコントロールを通じて、ドローンの安定性、効率性、機動性を大幅に向上させるものです。これにより、産業用ドローンや物流専用ドローンの運搬性能が向上し、スープのようなこぼれやすいものの運搬や、より安定性が必要な新たな市場や用途での利用が可能になります。エアロネクストはこの技術を4D GRAVITY®特許ポートフォリオとして管理し、産業用ドローンの新たな可能性を広げているんです。

──まさにテクノロジーの塊ですね。ですが、ドローンの受け取りもまだまだ課題あると聞きますが。

(畑田さん)ラストワンマイルと呼ばれる、荷物を置いたあとの個別の家や人に渡すまでの区間ですね。現状のドローン法規制のなかでは、複数の目的地を経由することは認められておらず、一度目的地で荷下ろししたら戻ってこなくてはならないんです。ですので、人口が少ない地域で、まとまった部数の新聞を拠点に運び、そこから陸送で個別に配達するという実験も行っています。これにより、遠隔地でも効率的に荷物を届ける新しい配送の可能性を探っています。

地方の課題であるラストワンマイルも物流問題を解決するNEXT DELIVERY

──ドローン配送の最大のメリットは何だと思いますか?

(畑田さん)前述した通り、ドローン配送の最大のメリットは、特に山間部などのアクセスが困難な場所への配送効率を大幅に向上させることにあります。市街地では車が依然として効率的な選択肢ですが、山間部のように1件の配送のために数十分も車を走らせる必要がある地域では、ドローンが大きな解決策となり得るんです。人件費、車両費、燃料費などのコストを削減できるのはもちろん、配送業者の人材不足という問題に直面している現状においても、ドローン配送は有効な解決策となるでしょう。

──ラストワンマイルの問題解決のために、物流会社とも連携していますね。

(畑田さん) 私たちNEXT DELIVERYは、親会社であるエアロネクストと共に、物流大手のセイノーHDと業務提携を結びました。この提携の目的は、無在庫、無人化を実現する新スマート物流の事業化に向け、既存の物流とドローン物流を接続し、オープン・パブリック・プラットフォーム(O.P.P.)型の新スマート物流のサービスモデルを共同で構築することです。これにより、人口減少や特定過疎地の交通問題、医療問題、災害対策、そして物流弱者対策など、地域の様々な社会課題の解決に貢献し、コミュニティの質の向上を促し、地域全体の活性化を目指しますし、ドローンを用いたラストワンマイルの配送サービスにとっても、より広範囲での実用化に向けた大きな一歩を踏み出せるようになりました。

ドローンが紡ぐ物流の新時代

──今後取り組まれていく事はありますか?目標や課題について教えてください。

(畑田さん)冬季の温度調節や山間部での獣害対策が可能な専用宅配ボックスの開発を進めています。これらの技術的な進歩は、ドローン配送の安全性と信頼性をさらに高めると思いますし、特に、厳しい気候条件下や特殊な地形での配送ニーズに応えられるようになることが目標です。
当面の課題は、法整備とドローンパイロットの育成ですね。私たちは、ドローンとパイロットの両方を提供する新たな輸送手段を社会に納品することを目指しています。上士幌町での実証実験を繰り返し、法改正が進んだ際にはすぐに事業を拡大できるよう準備しています。また、上士幌町のようにドローンに対する社会的な受容度が高い地域での成功を足掛かりに、他地域への展開も視野に入れていますよ。

──地域社会との関係性についてどのように考えていますか?

(畑田さん)実は他地域の拠点と比べて上士幌拠点は一番成功しているんです。その理由は上士幌町は、熱気球の町として古くから気球が飛んでいたので住民の方々が空を飛ぶものに対する抵抗が非常に薄かったというのが理由です。このような地域性が、ドローン事業を進めやすくしており、日本で一番ドローン物流が進んでいる地域なんです。前述しましたが私たちは国土交通省と密に情報交換しながら新しい物流の仕組みをつくっています。ここ十勝から日本新しい物流の基準ができていけばとても面白いなと感じています。

──最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

(畑田さん)ドローン技術は、農薬散布や撮影だけでなく、将来的には測量や救難救助など、さまざまな領域での利用が期待されています。私たちは、物流業界でのドローンの可能性を最大限に引き出し、ラストワンマイルの問題を解決することを目指しています。物流会社や大手物流企業との連携を深め、ドローン配送の新時代をリードしていきたいと考えています。ドローンがもたらす未来にご期待ください!

編集後記

高い技術力でドローンを使った空の物流革命を起こそうとしているNEXTDELIVERY。もともと熱気球という空の文化が根付いていた上士幌町で、地域と密着しながら先進技術を活かし日本の新しいルールを作ろうとしている畑田さん。インタビューでも自分事として地方の物流の課題について熱く語る姿が印象的でした。NEXTDELIVERYの今後の展開に、引き続き注目し、応援していきます!

LINK

NEXTDELIVERYホームページ

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会

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