十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」! 今回はハンターと飲食店を繋げるWEBサービスの運営をおこなう㈱Fant代表取締役の高野さんにご登場いただきます。
ご自身も狩猟をする高野さん。狩猟業界が抱える課題や、今後目指していく姿について伺いました!
株式会社Fant 高野 沙月さん
プロフィール
高野 沙月さん(たかの さつき) (株)Fant 代表取締役1990年音更町生まれ。北海道帯広緑陽高等学校、明星大学造形芸術学部卒業後、(株)ティラノ入社。2016 年に北海道上士幌町へJターン。
2019年(株)Fant設立。第一種銃猟免許、猟銃所持許可を保有。
――㈱Fant代表の高野さんは、「ハンター」「食肉処理施設」「ジビエを提供する飲食店」を結びつける、これまでになかったシステムの開発・提供を行っています。
具体的には、飲食店から「〇月〇日までにシカ肉が欲しい。報酬は〇〇円で」といった形でシステムからハンターに依頼が届き、依頼を受けたハンターが、ジビエの調達をおこないます。
ハンターと飲食店を繋げるプラットフォーム『Fant』
「㈱Fantは、ジビエ(狩猟で捕獲した野生鳥獣の肉)の新しいサプライチェーンを構築し、狩猟・ジビエ業界のDX化に取り組んでいます」
「ここ数年注目を浴びているジビエや狩猟ですが、業界にはさまざまな課題があります。まずハンターは原則、調達したジビエを飲食店に直接販売することは出来ません。捕獲したジビエは食肉処理施設に搬入する必要があり、ハンターが飲食店と直接価格を交渉するような機会が基本的にありません」
「ハンターがジビエを搬入する食肉処理施設は全国に約700か所あるものの、個人経営の施設が多く、ジビエの精肉以外にも営業・事務作業・発送・在庫管理・・・などなど多岐にわたる業務を少人数で行う必要があり、ハンターや食肉処理施設は利益が出にくい構造となってしまっています」
――高野さんの構築したこの新しいシステムで、食肉処理施設はジビエの精肉処理以外の業務の負担を軽減することが可能になり、また、これまで飲食店側の需要はあるものの、その需要がハンターに届いておらず流通が少なかったカモやウサギといったジビエを流通させることも可能になりました。
Fantのサービスを通じて需要と供給が分断されていた「ハンター」「食肉処理施設」「飲食店」が繋がりました。すごいぞ、高野さん!
――高野さんは、東京で働いていた時にジビエの美味しさに感動されて、狩猟の業界に入られたと伺いました。Fantのサービス形態はどのように作られていったのでしょうか?
「狩猟業界に入り、その現場を体験したことで、ここ数年増加している20代~30代の若手ハンターにとってより良い環境整備が必要だと感じましたし、農家さんが抱える鳥獣被害の深刻さを強く感じました。それを解決したいと考え、十勝で行われている『とかちイノベーションプログラム』に参加し、アイディアを提案しました」
「その時はハンターが調達したジビエをふるさと納税やクラウドファンディングのような仕組みで流通させる事業アイディアでしたが、プログラム終了後に札幌のD2ガレージのプログラム『Open Network Lab Hokkaido』の中でビジネスアイデアのブラッシュアップを行っていき、現在の形になりました。形は変わりましたが、農家さんが抱える慢性的な鳥獣被害を減らしたい、若手ハンターにとってより良い環境をつくりたいという思いは変わっていません」
――狩猟業界を取り巻く環境はどのように変化していますか?また、どのような課題があるのでしょうか?
「近年、日本でもジビエが注目されています。ジビエを取り扱う飲食店も増えましたし、メディアでも目にする機会が増えました。狩猟を題材にした漫画や、狩猟生活を送る芸能人も現れているようです。これに伴い、若手のハンターも増えてきていますが、収入が安定しないので兼業ハンターや趣味で狩猟をする人が多い状況にあります」
「収入面でいうと、秋冬はジビエの旬ということもあり、飲食店からの需要が高くジビエの販売収入につながることも多いです。一方、春夏は自治体からの害獣駆除依頼に対する報酬や報奨金が主な収入源となりますが、自治体によって金額もバラバラで安定しているとは言えません。また、春夏に駆除したジビエは飲食店には出回らず、ほとんどが廃棄されています。こういった課題をFantを使って解消し、ハンターが安定して収入源を確保できる環境づくりや、ジビエ廃棄量の減少・利用量の拡大につなげていきたいと思っています」
Fantによる利用量増で、もっと気軽にジビエを食べられる日が来るかも
――Fantの強みや今後の事業展開について教えてください。
「Fantは競合が無い環境でいち早く取り組み、先行して千人以上の登録者を確保したことが強みです。令和4年10月現在、全国の約1,300名のハンターに登録いただいており、今後さらなる増加が見込まれています」
「実は今月(令和4年10月)から新機能を搭載しサービスをリニューアルしました。新しいFantでは飲食店がハンターに欲しいジビエの調達をオーダーできるようになったほか、納品した肉に対する飲食店側からの評価機能を追加しました。評価を『見える化』することでハンターと飲食店のより良いマッチングに繋げていければと考えています」
「今後の事業展開ですが、現在の『ハンター』『食肉処理施設』『飲食店』に加えて、『鳥獣被害に困っている農家さん』をこのサービスの対象に加えていきたいと考えています」
「実際に鳥獣被害を受けている農家さんがFantのサービスからヘルプを発信でき、それを見た近くのハンターがヘルプのあった場所を重点的に見回り駆除してもらえるような仕組みがあれば、もっと直接的に鳥獣被害の課題を減らせると思っています」
「これまでも、ハンターが畑で作物を食い荒らしているシカを見つけても、若手ハンターは駆除するために勝手に畑に入って良いのかわからず、見ている事しかできないというケースや、良かれと思って駆除したものの許可を取らず私有地に入ったことで後々トラブルになるケースもあるので、農家さんまでサービスの対象を広げることができればトラブル回避につながり、地域にとってより良い効果をもたらすのではないかと思っています」
高野さんの挑戦は続きます
今までバラバラだったものをFantのサービスによって繋ぎ合わせることで、それぞれが抱えていた課題を解決でき、持続可能な未来につながっていく素晴らしい取り組みだと感じました。
進化を続けるFantのサービスが狩猟業界にどのような影響を与えるのか楽しみですね!高野さんの取り組みを応援していきます!
帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会
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