十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!
今回は、帯広市で、コーヒー豆の販売やコーヒーに関するオンラインサロン・セミナーの実施、コーヒーと食の掛け合わせの研究などを通して十勝のコーヒー文化の確立・醸成を目指す、GreenFive Coffeeの鈴木さんにお話を伺いました。
GreenFive Coffee 鈴木 孝直さん
プロフィール
鈴木 孝直さん(すずき たかまさ) GreenFive Coffee代表滋賀県生まれ。2016年に帯広畜産大学大学院修士課程を修了。修士論文で「コーヒー文化によって日本の消費者にもたらされる生活の質への付加価値の検討」をテーマに研究し、食文化の側面からコーヒーを専攻する。東京のコーヒーメーカーに入社しコーヒー豆の製造と品質管理に携わった後、2020年に、帯広市で自家焙煎コーヒー豆の製造・販売を行う「GreenFive Coffee」を開業。
――鈴木さんは2020年にLANDのカフェスペースを使って営業されていました。現在は市内に拠点を構えながら活動をされていますが、現在の取り組みについて教えて下さい。
(鈴木さん)「コーヒーの価値と品質を正当に評価する」ことをモットーに、現在、ホールセールやリテール、コンサルティングと3つのドメインで事業を進めています。ホールセール事業では市内の喫茶店やホテル等へコーヒー豆を卸しており、リテール事業では店舗やECサイト、また帯広市のふるさと納税の返礼品としてもコーヒー豆を販売しています。コーヒー豆を挽いた状態ではどうしても香りが薄れてしまうので、原則、コーヒー豆の状態で販売しています。また、コンサルティング事業では自身でオンラインサロンやセミナーなどを主催しており、YouTubeで動画の配信を行ったりもしています。当店のコーヒーだけが美味しいと言われるだけでなく、十勝のお店で提供されるコーヒーはどこも美味しいと言われることを目指して、十勝における総合的なコーヒー文化の確立・醸成に取り組んでいます。
この他、コーヒーの研究活動も行っており、帯広市内にある「GreenFive Laboratory」では当店のコーヒーをお召し上がりいただけるのはもちろんのこと、コーヒーの抽出・分析の体験サービスも提供しています。ドリッパーを始めとする豊富な種類の機材を備え、自分がどういったコーヒーが好きか、ミルも電動か手動か、店舗でのコーヒーの淹れ方に加えてご自宅での淹れ方など、お客様それぞれに合ったコーヒーに出会えるようなお手伝いをしています。全ては十勝の皆様のコーヒーライフの一助となれればと考えて活動を行なっています。
また、学生時代からコーヒーの研究を行なってきていますが、コーヒーはまだまだ奥が深いなと思っています。これからは十勝の食とコーヒーの掛け合わせたフードペアリングコーヒーにも取り組んでいきたいですね。
鈴木さんこだわりのコーヒー豆
――あまり聞き馴染みがありませんが、フードペアリングコーヒーとはどういったものなのでしょうか。
(鈴木さん)フードペアリングとは、味わいや香りの相性の良い食材の組み合わせを考えることです。コーヒーで言えば、デザートと組み合わせることが一般的です。最近ではチーズとの組み合わせも増えてきていますが、ワインのようにコーヒーも食ともっと密接にできると考えています。着想は前職時代にコーヒー豆を製造していたところ焼き魚のような匂いがすることに気が付き、焼き魚と一緒に味わうと意外と合うことが分かったというのがきっかけでした。
調理による食材の変化を科学的に分析し、それを応用しようとする「分子ガストロノミー」の考え方の中でペアリングにも触れており、意外かもしれませんが例えばエビとコーヒーが成分的に合うと言われています。チョコの苦味や甘味がコーヒーの苦味と合うように、甲殻類の香ばしさとコーヒーの香ばしさが分子レベルで近く、味わいが共鳴するのです。その他にも例えばキウイと牡蠣は成分的に近く、磯っぽい香りがリンクするといった発見がありますよね。こういった考え方で十勝の食材にフォーカスし、十勝の食文化に付加価値を付けられるよう、例えば魚や牛肉とコーヒーとのペアリングなど、色々な方々と意見交換しながらペアリングについて考えていきたいと考えています。
鈴木さんはフードペアリングの理解を深めるために、科学や物理を学び直したと言う
――鈴木さんはコーヒーの研究にとても熱心に取り組まれていますが、鈴木さんは大学進学で北海道に来られる前からコーヒーの普及活動に取り組むことを考えていたのでしょうか。
(鈴木さん)私は滋賀県の出身なのですが、実家が農家で小学生の頃から夏休みに農作業の手伝いをしている中で農業に憧れを持ち始め、高校生の頃には将来的には農家になるという夢を持っていました。大学進学では農業系の学科のある大学を調べ、酪農・畜産を勉強するために帯広畜産大学に進学しました。しかしながら、授業で屠畜や血抜きなどの様子を見学する中で挫折してしまったんです。それでも勉強だけはしっかりと頑張ろうと取り組んでいる中で、大学2年生の時に自家焙煎コーヒーに関する本と出会い、コーヒーへの興味を持ち始めました。
アルバイトで貯めたお金で焙煎機を買い、自身で立ち上げたコーヒー研究サークルの活動で友人たちにコーヒーを振る舞っている中でコーヒーが苦手だった人がどんどん好きになっていってくれたのです。大学時代の友人たちは地元に戻った今でも、ドリッパーを買ったことやカフェインレスコーヒーの相談などで連絡を取っており、この活動をもっと広めたいと思い、今の事業を始める決意をしました。
品質保持とインテリア性に優れたボトル入りコーヒー豆も好評
――今後の展望について教えてください。
(鈴木さん)コーヒーを提供するすべての飲食・サービス業の方々に高品質なコーヒーに関する正しい知見を持っていただくために、コーヒー文化をリードする日本一のコーヒーマスターになることを目指しています。様々なコーヒーの楽しみ方を提供できるように、先ほどのペアリングの話もそうですが研究を続けていきます。また、十勝のカフェ同士の横の繋がりをもっと作っていきたいですね。お互いに情報交換を行う中で、向上し合える環境があることが良いのではないかなと考えています。
より多くのお客様に発信していきたいと考えていますが、事業拡大も重要なのでまずはホールセールを増やしていきたいです。その他、現在行なっているコーヒーに関するオンラインサロン・セミナーから、コーヒー豆の販売にも繋げていきたいですね。また、当店だけが有名になるのではなく、こだわりのコーヒー豆で十勝の飲食店全体を下支えしていきたいと考えています。セミナーも増やしたいので、ぜひまたLANDでもセミナーを開催したいです。
コーヒーに真っ直ぐな鈴木さん。これまで培ってきたコーヒーのノウハウを広めるとともに、フードペアリングなど新たな研究にもひたむきに取り組んでらっしゃいます。
十勝の食文化にコーヒーが加わることで、十勝産食材の新たな魅力の発信に繋がる大変意義深い活動であると感じられました。
これからも鈴木さんの活動を応援していきます!
帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会
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