北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!
今回は、十勝の企業と新規事業創発に関心がある首都圏の企業との共創プロジェクト「十勝・帯広リゾベーション協議会」を発足した、KPMGモビリティ研究所/KPMGコンサルティング ビジネスイノベーションユニットの倉田さんにお話を伺いました!

KPMGモビリティ研究所 倉田 剛さん

プロフィール
倉田 剛さん(くらたたけし) KPMGモビリティ研究所/KPMGコンサルティング ビジネスイノベーションユニット

大阪大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ大学MBA修了。朝日新和会計社(現 有限責任あずさ監査法人)入所後、大手企業等の法定監査や上場支援業務に従事。 その後、サービス業、飲食業、通信業などにおいてERPの導入及び経理業務改革等を担当。
 現在、新産業領域でのイノベーション創出や経理業務高度化などのアドバイザリー業務を担当しながら、KPMGモビリティ研究所にて「十勝・帯広リゾベーション協議会」を発足。MaaS(Mobility as a Service)やスマートシティに関する調査・研究、自治体等における実証事業に関わる。

十勝×大都市で生まれるイノベーション!十勝・帯広リゾベーション協議会

ーー倉田さんは十勝圏企業との新規事業共創プロジェクトとして「十勝・帯広リゾベーション協議会」という団体を運営されていますが、「リゾベーション」とはどのような意味の言葉なのでしょうか?

(倉田さん)リゾベーションとは、リゾート、ワーケーション、イノベーションを掛け合わせた造語で、魅力ある地域に大都市から人々が何度も訪れ、地域の人々や資源、そこに集まる人々と出会いからイノベーションや新しい事業が生み出されていくことを目指しています。
 新型コロナウイルス感染症の拡大によってテレワークなどの働き方が一気に広がりました。仕事をする場所を選ばなくなり、仕事とバケーションを兼ねるワーケーションという働き方も登場し注目を集めていましたよね。
 ですが、企業としてワーケーションを推進していくには費用面や労務管理面の問題があり、単に働く場所を変えるだけではない「リゾベーション」というコンセプトを提唱しました。

ーー十勝・帯広リゾベーション協議会ではどのようなことに取り組んでいるんですか?

(倉田さん)「十勝・帯広リゾベーション協議会」には、リゾベーションのコンセプトに賛同し、十勝・帯広に新たな事業機会を求める以下の企業が参加しています。

十勝・帯広リゾベーション協議会参加企業
 十勝シティデザイン株式会社・十勝バス株式会社・帯広日産自動車株式会社・KPMGモビリティ研究所(KPMGコンサルティング)・一般社団法人 大丸有環境共生型まちづくり推進協会(三菱地所)・株式会社電通・ジョルダン株式会社・株式会社ジョルテ・株式会社乃村工藝社・株式会社JTB・土屋ホームトピア・株式会社Flight PILOT・公益財団法人とかち財団

 定期的な取り組みとしては毎月協議会のミーティングを実施し、それぞれの会員が十勝・帯広でどんな事業を起こしていきたいかを共有しています。
 これまでに、リゾベーション体験ツアーや、十勝と連携した新規事業創発に関心がありそうな首都圏企業100社へのインタビュー調査(帯広市委託事業)、帯広市の大空エリアで十勝バスとKPMGの協業により生まれた「日本初のマルシェバス事業」、交通と異分野を掛け合わせた新しいバス停の姿を学生と一緒に考えるワークショップ(国交省共創プロジェクト)なども行いました。
 リゾベーション体験ツアーは、内閣府の関係人口創出・拡大事業の一環として計3回の実施で約40社89名のご参加、イベントには計5回延べ220名にご参加いただきました。その後も独自事業として、2回のツアーを開催しています。

リゾベーション体験ツアーの様子

――なぜ十勝をフィールドに選ばれたのですか?

(倉田さん)東京で十勝シティデザインの柏尾社長と出会ったことがきっかけです。柏尾社長が取り組まれている帯広市のホテルを中心とした街づくりや、馬車BARという魅力的な観光コンテンツは、ワーケーションと非常に相性がいい取り組みをされていると思いました。
 その後、別のタイミングで次世代モビリティの第一人者であり、当時KPMGモビリティ研究所のアドバイザーだった石田東生先生から十勝はポテンシャルがあるので、是非行った方がいいという助言をいただいたり、十勝バスの野村社長や帯広市の米沢市長とお話しする機会もあり、どんどん十勝の魅力や可能性の高まりを感じていました。
 それが確信に変わったのは、2020年の緊急事態宣言明けに、十勝バスの野村社長が上士幌町のしんむら牧場で開催したセミナーに参加するために十勝を訪れた時でした。「ワーケーションで個人に働きかけていてもインパクトがない」「首都圏企業は新事業創発の場所やきっかけを探している」「食料自給率1,300%を誇る十勝地域のポテンシャルと掛け合わせることでイノベーションが起こせるのではないか」と思いました。
 十勝は国の機関ではなく、民間の株式会社が開拓した土地という事もあると思いますが、他地域とどこか異なる気風があるように思います。新しいことをやろうとしている人が集まる気風ですね。
 将来的に、その地域で生み出したものを他地域に展開していくことを見据え、一定の経済規模がある帯広を事業のフィールドに選びました。

交通×百貨店で地域に与えたインパクト!「マルシェバス」

――十勝・帯広リゾベーション協議会の取り組みとして「マルシェバス」はメディアに大きく取り上げられ話題になりました。なぜ「マルシェバス」を始めたのでしょうか?

(倉田さん)私が所属しているKPMGモビリティ研究所に関連する事業で、国の補助事業を活用しながら地域に一定のインパクトを与えられる事業を行いたいと思い、十勝バスの方とミーティングを重ねました。そんな中、ミーティングのためにバスに乗っているKPMGのメンバーが、コロナ禍と言うこともありガラガラだった状態を見て勿体ない、何とかできないかと考えて提案し、人以外の物を運んでみてはどうかというアイディアが生まれました。
 ブラッシュアップを重ねて提出アイディアが経産省の補助事業として採択され、マルシェバスがスタートしました。十勝らしさを追求し、ラッピングには拘りました。中心市街地に通う機会の減った地域住民に地元百貨店の“ちょっといい商品”を届けるという姿が全国のTV、ラジオ、新聞など多くのメディアに取り上げられました。実際に運行したのは冬でしたが、停留所周辺では多くの大空の人たちがマルシェバスの到着を待っていてくれました。バスを待つ人のコミュニティも生まれ、賑わいを創出する事ができました。
 マルシェバスは公共交通と小売りの掛け算ですが、今年は更にバス停の再定義・再構築による共創拠点「にぎわいターミナル」創出事業といって、公共交通とエネルギー、医療、農業、宅配、情報発信、物流、飲食などを掛け合わせたコンセプトが国交省の「共創事業」として採択され、公共交通の持続性確保のための検討を進めています。こうした取り組みが評価され、一般社団法人日本自動車会議所・日刊自動車新聞社共催の「第2回クルマ・社会・パートナーシップ大賞」において大賞に選んで頂きました。

十勝のイメージでラッピングされたマルシェバス

バスの内部には商品棚が置かれ百貨店の商品が並ぶ

――まさに地域にインパクトを与えるイノベーションと言えますね。「帯広市大空町」を実証実験の選ばれたのはなぜですか?

(倉田さん)実は大空はモビリティの実証実験を行うにあたり、非常に適した土地なんです。帯広の都市からも程よい距離があって森に囲まれています。区切られたエリアでありながら公道が通っているという条件で、初めて大空を訪れたモビリティの専門家の方が「こんな土地が日本にあったのか」と驚く姿を何度か目にしました(笑)。大空を「奇跡の街なみ」と呼んだ人もいるほどです。
 これから大空エリアがモビリティの実験場としてメッカになっていって、モビリティの発展により、そこに暮らす方々が買い物や医療など生活に不可欠なモノやコトに対して自由にアクセスできる環境が整っていくといいなと思っています。

帯広市大空町の航空写真。赤線で囲まれているのが大空町。 引用:GoogleMap

――これから十勝はどんな風に変化していくと思いますか?

(倉田さん)自動運転などのモビリティ技術の発展や、MaaSなどの活用により、北海道ならではの交通課題が解決されているといいなと思います。特に50年後には既存の交通手段に加えて空を飛んで移動する時代が来ているかもしれませんね。そうなると十勝の各町村同士の距離なんかは気にならなくなっているかもしれません。
 2021年6月に北海道経済連合会が示した「2050北海道ビジョン」に登場する北海道の未来像を見て頂くと、ロケットや空飛ぶドローン、バイオマス水素発電にワイン、衛星と通信するトラクターなどかなり十勝を意識している感じがしませんか?
 道内においても十勝が先進的取り組みをしている土地だと認識されているのだと思います。この先、エネルギーやモビリティにおいて新しい取り組みが継続される土地になっていけばいいなと思っています。
 脱炭素の観点でいうと、鹿追町のバイオガスプラントなどは、家畜糞尿という地域のマイナスだったものをプラスに変える素晴らしい取り組みだと思います。そこから水素発電ができるようになり、エネルギーを地域で賄えるような循環型の地域になってほしいです。今は、規模は小さいけれどマルシェバスや共創事業があり、地域の事業者を繋ぐLANDのような施設がある。高等教育機関としては帯広畜産大学、小樽商科大学、北見工業大学の3学連携によって、シリコンバレーにスタンフォード大学があるように、地域の企業や教育機関、住人が連携した循環社会を作っていけるといいですね。
 十勝は住む人の気風に加えて自然豊かで山も川も食もリッチです。私が初めて十勝に来た時も東京の企業という事で最初は警戒されましたが、関わっていくうちに受け入れられてきたように感じます。十勝・帯広リゾベーション協議会はこれからも活動を広げていきます。地域の交通に興味がある企業や、十勝にイノベーションを起こしていきたい企業の方はぜひ一緒にチャレンジしませんか?

2050北海道ビジョンに描かれた未来像

---リゾベーションという軸を通すことで、十勝の企業と首都圏の企業が連携できる可能性を生み出す倉田さん。それぞれの参加企業が持つ強みを生かし、事業の枠を超えた課題解決に繋げていく協議会の取り組みは、これからの社会に必要になっていく新しいカタチなのではないでしょうか。LANDはこれからも倉田さんと十勝・帯広リゾベーション協議会の活動を応援していきます!

LINK

十勝・帯広リゾベーション協議会Facebook

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会

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