北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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SPACE COTAN株式会社

中神 美佳さん

#24「北海道に宇宙版シリコンバレーをつくる」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

今回は、大樹町で国内外の様々な企業や団体が利用可能な宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」のプロジェクトを推進する、SPACE COTAN株式会社の中神さんにお話を伺いました。

SPACE COTAN株式会社 中神 美佳さん

プロフィール
中神 美佳さん(なかがみ みか) SPACE COTAN株式会社 取締役兼CMO(マーケティング、PR担当執行役員)

1986年大樹町生まれ。2009年に日産自動車株式会社入社。Global Market Intelligence部門にて世界10か国以上の市場調査・分析を実施。コンパクトカーや電気自動車等の商品企画やコミュニケーション戦略立案を推進。その後大樹町地域おこし協力隊として、ふるさと納税の改善や観光、移住事業等を実施する傍ら、同町にて起業。2018年から株式会社スマイルズクリエイティブ本部にて、広報、ビジネスプロデューサーとして自社事業からクライアントワークまでを担当し、2019年にはスマイルズ北海道支社を立ち上げ。その後、民間ロケット会社の広報を行った後、2020年から北海道航空宇宙企画株式会社にジョインし、北海道スペースポートの立ち上げに参画・2021年から現職。

――現在の取り組みや今後予定されている取り組みについて教えてください。

(中神さん)大樹町のHOSPOの整備を進めています。具体的には、人工衛星用ロケット発射場のLaunch Complex-1(LC-1)の整備工事が進んでおり、現在は射場の詳細設計を詰めているところです。工事に必要な調達物品の選定も同時並行で進めています。
 LC-1運営の準備としてロケット打ち上げ事業のサービス形態や料金設定も決めていく必要がありますし、射場の運営には内閣府の許認可が必要となるため、その調整など運営フェーズに向けて進めなくてはならないことはまだまだたくさんあります。
 また、上述の射場近くにある滑走路では、ドローンや空飛ぶクルマなどの次世代モビリティ、飛行船など様々な航空宇宙関連の実証実験も進んでいます。最近だと気球による宇宙遊覧フライトの実現を目指す株式会社岩谷技研(札幌市)の実験も行われたところです。すでに大樹町は航空宇宙実験の聖地として認知されていますが、今後もさらなる実証実験の受け入れ強化を図っていきたいと考えています。
 加えて、顧客となるロケット等の開発企業の誘致も進めていかなくてはなりません。HOSPOは、日本初、そしてアジア初となるあらゆる民間商業利用が可能な射場として、国内外を含めて多数の企業から注目されています。大樹町さんと営業活動を進め、国内外の約20社から引き合いをいただき、アメリカ、ヨーロッパ、韓国やシンガポール等アジアからも引き合いがあります。既に様々な企業と話を進めており、これらの注目に応えていくためにも早期の射場開設を目指しています。

LC-1の完成イメージ図

――地域への波及効果も大きいですね。

(中神さん)HOSPOの整備にあたり、これからの「宇宙のまちづくり」に関するグランドデザイン(中長期計画)も検討していく必要があります。HOSPOの周辺でロケットやエンジンの量産工場の整備が進めば、従業員を受け入れる住居や宿泊施設なども必要となります。より大きな規模の工場も増えると電力もひっ迫していきますので、電力会社と調整する必要も出てきます。大樹町は酪農など第一次産業を中心に栄えてきたまちですが、既存の産業との調和や宇宙産業があることで第一次産業がさらに発展するような未来を描いていきたいです。
 SPACE COTAN主体で町民の皆様やHOSPOを応援してくれる行政・企業団体の皆様とともに「宇宙のまちづくり」の理想像、ビジョンをまとめ3月末までには町へ提言する予定です。今年度は昨年の秋頃から地域住民を交えて宇宙のまちづくりに関するワークショップやヒアリング、検討会議も始めています。大樹町は現行の第5期総合計画が令和5年度で終了することから、次期計画の本格検討に合わせて宇宙産業としての考えを打ち出し、第6期総合計画の参考にしていただければと考えています。

「宇宙のまちづくり」に関するグランドデザインを検討するために実施した町民ワークショップ

「宇宙の6次産業化」を目指して

――民間企業が使える商業スペースポートを立ち上げてから2年間で大躍進を果たしていますが、大きな要因は何でしょうか。

(中神さん)まだ始めて2年の取り組みに対し、これだけの応援をいただきとても感謝しています。ですが、決して我々だけでは成し得なかったものと感じており、これだけの注目を集めているのも約40年近く、町が航空宇宙のまちづくりを続けてきてくださっているお陰だと感じています。他にも北海道庁や北海道経済連合会、NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)、とかち航空宇宙産業基地誘致期成会など様々な団体が後押ししてくださっており、まさにオール北海道でやってきた資産が積み上がってきた土台の上で私たちが事業を行えているものと思っています。決して弊社の2年間の活動だけで出来たことではありません。
 また、北海道や大樹町が持つポテンシャルの高さがあります。大樹町は東と南に海が広がる地の利があり、晴天率も高いですし、十勝港や帯広空港との距離もちょうど良く、打ち上げが効率的に高頻度にできるポテンシャルを秘めています。このポテンシャルを活かして大樹町を政府が掲げる「アジアの宇宙ビジネスの中核拠点化」となる地域にしていきたいと考えており、現在着工しているLC-1や計画中のLC-2をまずは早期に整備するとともに、将来的にはLC-3、LC-4ともっと拡大していきたいです。
 加えて、航空宇宙関連の実証実験ができるフィールドとしてもスピード感を持って地域と調整し、色々な方々に来ていただけるような射場にしていきたいと考えています。

――大樹町を中心として宇宙関連産業が集積することによる経済波及効果はどのようなものが挙げられますか。

東京のインフォステラ社が昨年、小学校跡地に人工衛星などを追跡するための地上局サイトを設置。大樹町内での宇宙関連産業集積が始まっている

(中神さん)宇宙関連産業の取り組みによる経済波及効果として、ロケットの打ち上げが頻繁に行われることで、ロケット等の開発企業が近隣地域に工場を開設し、ヒト、モノ、カネが地域に入ってきます。北海道経済連合会から北海道スペースポートによる経済効果 267億円/年という試算もでています。私たちは「宇宙の6次産業化」と呼んでいますが、1次は射場が整備されロケットの打ち上げが行われること、2次は射場の近くに工場が建ちものづくり産業が集積すること、3次はその打ち上げた人工衛星のデータを利活用することです。これらの動きがより効果的に生まれてくる環境を整備したいと考えており、「宇宙の6次産業化」ができる地域は国内では北海道しかありません。これら3つのフェーズを十勝、北海道の中でカバーできることで大きな経済効果が生まれます。先に取り組みが進んでいる国内の他の射場は広い用地がなく工場が近くに建てられないため他地域でロケットの開発を行っているのが現状で、射場まで運搬のうえ組み上げて打ち上げを行なっています。十勝、北海道ではそれが地域内で完結できる可能性があります。

――農林漁業における衛星データ利活用や、牛の糞尿由来のバイオ燃料利活用など「宇宙×○○」として関連産業との取り組みも増えていますが、今後展開したい関連産業との取り組みはどのようなものを想定されていますでしょうか?

(中神さん)宇宙関連産業でのものづくりのサプライチェーンを構築していきたいと考えています。例えば株式会社釧路製作所や室蘭市の株式会社キメラなど、非宇宙産業の業種の企業が宇宙関連産業に魅力を感じてくださり、ロケット部品製造や周辺設備・機器の開発などに参入するといったような動きも出てきています。
 他にも、INCLUSIVE SPACE CONSULTING株式会社は衛星データの利活用による既存産業の課題解決を目指しており、経済産業省の実証として、JA大樹町と連携した牛の乳房炎の発症リスクの低減に取り組むほか、林業現場の作業効率化に関する実証なども行なっているところです。我々の取り組みで宇宙関連産業の裾野が広がり、新しいプレイヤーが入ってくるようなムーブメントをどんどん巻き起こしていきたいと考えています。
 大樹町内では、牧場もメガファーム化が進み、家畜の糞尿の処理コストや臭気問題が深刻化しています。そこで、家畜の糞尿から生成されるメタンガスをバイオ燃料にして、ロケット燃料や地域の施設等のエネルギー源として活用し、臭気問題も解決するカーボンニュートラルの取り組み構想もあり、既に大樹町と十勝管内で実証も始まっています。

大樹町の酪農家から、帯広市のプラントにメタンガスを運んできたトレーラートラック

 また、既に取り組んでいる教育・研修旅行や宿泊学習、修学旅行などの受け入れを増やしていきたいと思っています。キャリア教育やSTEAM教育等で既に道内外の学校から直接連絡をいただくことも増えてきており、学校向け商品の磨き上げ、地域のガイドを増やしていくことにも力を入れていきたいです。観光分野も大樹町だけではなく広域で実施していきたいと考えており、射場を見学した後に衛星データを利活用している農業現場やアグリテック企業を一連で見ていくといったサステナビリティや産業の循環を体感できるツアーを造成できると面白いと考えています。

「MOMO」の打ち上げ実験が行われた大樹町の射場LC-0。この近くにLC-1が整備される。

宇宙関連産業の集積と共に住民の暮らしの向上を

――新たな射場であるLC-2の建設や関連施設整備など様々な取り組みも予定されている中で、今後の展望などをお聞かせください。

(中神さん)改めて宇宙版シリコンバレーとはどういうものかを突き詰めて考えていきたいです。フロリダやヒューストンなど宇宙産業の本場を現地視察してきましたが、まさに宇宙版シリコンバレーの理想的な状態でした。フロリダは約40の発射場が整備され、国内から政府や民間のロケットが集まってきて打ち上げる宇宙産業のインフラとして機能し、周辺にはロケットや人工衛星の量産工場なども集積しており、ロケット開発に関わる企業約17,000社が集積、何十万人もの従業員がいます。航空宇宙の人材育成も進み、産業が一大観光資源になり、広域での効果がきちんと生まれています。そうした先進地域にどれだけ近づけていけるかが鍵であると考えています。
 また、地域住民の方々が宇宙関連産業の発展によって幸せに暮らしていける環境を整えたいと考えています。宇宙関連産業の集積によりヒト・モノ・カネが大樹町に集まり、それによって行政サービスの向上や受けられる教育の充実、町内のお店が増えて便利になることを目指していきたいです。大樹町は宇宙産業での発展がなければ他地域と同様に人口が減り現在5400人→3000人(2065年時点)まで減少する予測がでています。一方で、最近は宇宙産業により20-30代の流入が増えて、60年続いた人口減少が下げ止まり、近年では移住者による新規創業も増えています。宇宙産業が人口増加、地域経済の活性化に貢献できることがわかってきました。この動きを加速させるために、産業の呼水である射場を早期に整備し、ロケット打ち上げを本格化させていきます。

北海道に関連産業が集積する宇宙版シリコンバレーのイメージ図。

――最後に十勝の皆さんへメッセージをお願いします。

(中神さん)宇宙は他分野の様々な取り組みと関わることができると考えており、農林漁業、観光に教育、スタートアップコミュニティやまちづくりまで様々です。大樹町内だけでなく、十勝の方々にもっと関わってもらいたいと考えています。多くの方に宇宙版シリコンバレーを作り上げていく仲間になっていただきたいので、北海道スペースポート整備が進む現場を実際に見て実感を持っていただくためにも、まずは色々な方々に来てもらいたいですね。また、十勝が世界、アジアのハブ宇宙港となり、十勝から宇宙旅行ができるようになったり、世界中と結ばれる場所になると思うとワクワクしますよね。そんな未来を皆さんと一緒に作っていきたいと思います。産業育成のために企業版ふるさと納税や個人版ふるさと納税などの支援もまだまだ募集していますので、応援よろしくお願いいたします!

ロケット打ち上げは一見独立した産業に見えるかもしれませんが、その経済波及効果は大きく様々な産業との共創が生まれていく可能性を秘めています。大きく進展する宇宙港の整備に今後も目が離せません。
これからもSPACE COTANの活動を応援していきます!

LINK

SPACE COTAN株式会社

(SPACE COTANからのメッセージ)
大樹町、SPACE COTAN株式会社は、HOSPO施設の拡充のため、企業版ふるさと納税や個人版ふるさと納税を募集しております。
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〈ふるさと納税詳細〉

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会

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