北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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萩原建設工業株式会社

萩原 一宏さん

#45「『闘魂一途』のチャレンジ精神で地方における建設業のあり方を革新する」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!
大正7年の創業以来、十勝地方で最も長い歴史を持つ建設会社として、十勝の建造物やインフラ整備を行なってきた萩原建設工業株式会社。創業者から受け継がれた「闘魂一途」の精神は十勝の未来を築くための情熱の証。次の100年を目指し、十勝のスタートアップへの出資・協業、DXの推進、海外進出など、100年企業として変わらない原則を守りながらも、時代の変化に対応した積極的な事業展開を進める萩原一宏副社長にお話を伺いました。
(聞き手:LAND 小田)

萩原建設工業株式会社 萩原 一宏さん

プロフィール
萩原 一宏さん(はぎわら かずひろ) 取締役副社長(兼)社長室長

1980年生まれ。帯広市出身。東京の経営コンサルティング会社、建設会社勤務を経て2013年4月に執行役員営業副本部長として萩原建設工業株式会社に入社。2022年6月に現職に就任。

「闘魂一途(とうこんいっと)」でベンチャー精神を取り戻す!


――萩原建設工業は十勝で最も長い歴史を持つ建設会社として知られていますが、改めて御社について教えてください。
(萩原さん)当社は大正7年の創業以来、環境の変化に柔軟に対応しつつ、「建造物を通して人々の安全・安心を確保し、さらに建造物を通して人々を幸せにする」という理念を一貫して守り続けてきました。この不変の原則が、私たちの長い歴史の根底にあります。地域社会への深い貢献と共に、将来にわたってもこの原則を守り続けることが私たちの使命だと考えています。

――御社の社是である「闘魂一途(とうこんいっと)」について教えてもらえますでしょうか?
(萩原さん)「闘魂一途」という言葉は、創業者である萩原延一から受け継いだ私たちの精神です。2018年には創業100周年を迎え、その機会に創業者の理念「闘魂一途」について深く考え直すことにしたんです。「常に旺盛な攻撃精神を持ってものごとに取り組む」という解釈はあったのですが、古くからの社員に尋ねても、その言葉の意味を正確に理解する者はいませんでした。そこで当社の古い文献を調べ、言葉の意味の本質を探ったところ、創業者が「常に前向きに挑戦する」という意味でこの言葉を用いたことが明らかになり、これを現代風に解釈し直し、「常に旺盛なチャレンジ精神を持ってものごとに取組む」という解釈を再び掲げました。
 創業当時、当然ながら当社もベンチャー企業でしたが、創業から100年が経過する中で、保守的な会社になっていたように思います。次の100年への道を切り開くためには再びベンチャー精神を取り戻すことが重要だと感じ、「闘魂一途」の精神を改めて確認することで、新たな挑戦を推進しています。

――十勝のスタートアップへの出資や協業を行なっているのも、「ベンチャー精神を取り戻す」取り組みの一環なのでしょうか。
(萩原さん)その通りで、これまでに宇宙分野のスタートアップであるインターステラテクノロジズ(IST)SPACE COTANへの出資を行いました。宇宙産業との関わりとしては、その他にもISTの社屋・構造試験棟の設計・施工同社へのエンジニア派遣、そして北海道宇宙サミットのスポンサー参画などを行なってきました。国内外から多くのロケットメーカーが大樹町に参入することが期待されており、今後の宇宙産業の発展には期待しかないと考えています。また、活気あるスタートアップとの関わりを通じて、当社自身を変革していきたいという狙いもあります。
 同様に、食糧問題解決を目指す農業IoTソリューション企業、ファームノートへの出資も行っています。同社の創業者である小林晋也さんとは元々30年来の付き合いでもあるのですが、彼らを支援するとともに、彼らから新鮮な刺激を受けて当社の変革を促しています。

萩原建設工業が設計・施工を担ったインターステラテクノロジズの構造試験棟


萩原建設工業からインターステラテクノロジズに出向中の相馬さん



若手社員の声を積極的に取り入れた事業展開


――御社は昨年、カンボジア・シェムリアップのアンコールタイガーFCのサッカースタジアム建設プロジェクトに参画することを発表されましたが、その内容について教えてもらえますでしょうか?
(萩原さん)カンボジアへの進出は、アンコールワットがあるシェムリアップでプロサッカーチームを運営する日本人オーナーの方との繋がりができたことから動き出しました。現地の建設会社とのやり取りを行う中で、建設コストの削減に関するノウハウ提供において当社の価値が発揮できると判断し、参画を決断しました。具体的には、プロジェクト・マネジメント・コンサルティング(PMC)で、発注者と受注者(地場の建設会社)の間に入って、予算交渉や技術確認などの証明をしていくことで、きちんとサッカースタジアムが建てられるよう調整を行うことがメインです。
 また、それ以上に、社員から「やりたい」と声を挙げてもらえたことが大きかったですね。当社にとっても初の海外進出ですから、社員にとっては挑戦する場所として最高の環境だと思っています。地方の建設会社が海外進出を行う事例は少ないと思うのですが、これをきっかけに次のチャンスに繋げていきたいと考えています。

「タイガースタジアム建設プロジェクト」の共同記者会見の模様


サッカースタジアムのパース図



――若手社員の方々からは、風通しの良さやベンチャー気質があるといった声が聞かれますが、組織作りで特に意識していることはどのようなことなのでしょうか?
(萩原さん)当社は自由で開放的な環境を大切にしています。10年以上前まではトップダウンの傾向が強い組織でしたが、この4、5年で社員主導の提案が実現しやすい組織へと変革してきたように思います。DXの推進社報「HAGIWARA TIMES」などを通じた広報のあり方についても若手社員からの提案が活かされています。特にDXの推進については、国土交通省の「i-Construction大賞」「インフラDX大賞」の受賞にも繋がりました。今後も社員自らが考え、そのやる気をモチベートし、自由闊達に社員が“やりたい”を実現できる会社にしていきたいですね。
 また、会社として地域社会への貢献を考える際に、まず最も身近な「地域社会」は当社の社員であると捉えています。まず社員が仕事に楽しく取り組んでいないと意味がありませんし、その結果、地域住民の皆様にその「楽しさ」が広がっていくということがベストであると考えています。

――tokachi field action Lab(※帯広市と十勝の民間企業が主催する、十勝に興味・関心を持つ都市圏等の学生と繋がりを持つプラットフォーム。十勝の企業が行うインターンプログラムの運営サポート、十勝の企業が行う自社魅力の発掘プログラムの運営サポートなどを行なっている。以下、「tfaL」。)でのプロジェクトにおいても、大学生インターンと若手社員が協力してプロジェクトを動かしていますよね。
(萩原さん)tfaLには当社の社員も参加し、大学生インターンの皆さんと共に新しい広報のアイデアを形にしました。学生の皆さんから学ぶことも非常に多く、当社の若手社員の研修の一環とも捉えています。また、tfaLは若い世代の方々の視点から当社が客観的にどう捉えられているかを知る貴重な機会でもあります。プログラムの最終日には当社の社長以下、役員全員が学生の皆さんからのプレゼンを聞くのですが、毎回非常に刺さるご意見をいただいています。この学生の皆さんとの「ガチ体当たり」な関係が、当社にとっては非常にプラスになっています。

tokachi field action Labでのインターン活動の模様



「馬鹿にされることを恐れない」。自分自身が新しい風となれ!


――萩原さんご自身も東京から十勝にUターンされましたが、地方でのUターン就職についてどのように考えていますか?
(萩原さん)心の奥底ではもう少し東京で経験を積みたかったという思いもあり、いつ帰ってきたのかを忘れないために、帰ってきたときの航空券を今でも持っています。それでも、「まずは自分の仕事に一生懸命に取り組み、こちらの生活を楽しもう」と前向きに捉え直し、少しずつ進んできました。東京に比べ、無いものの方が圧倒的に多いこの街だからこそ、それを自分で作っていくことができるという楽しみがあると考えています。
 以前、十勝管内建設業の後継者の会である「帯広二建会」で、十勝管内の約2,000人の高校生に対してアンケートを実施したのですが、「十勝が好き」と回答した生徒が約75%であったにも関わらず「卒業後も十勝に残りたい」と回答した生徒が3割弱、「いずれは十勝に帰って来たい」と回答した生徒が約2割でした。もちろん、高校卒業後に管外に出たいという生徒の皆さんの気持ちは全く否定しませんが、いずれ十勝に帰って来るという選択肢を提示するためには、まずは十勝で働く大人たちが楽しそうにしていないといけないなと思っています。先ほどの「ないものを自分たちで作っていく楽しさ」ということも含めて、そのような十勝で生きる楽しさを若い世代の皆さんに伝えていきたいと考えています。

――最後に、十勝で今後起業や新たなビジネスを行っていきたいとを考えている方々、学生の皆さんへのメッセージをお願いします。
(萩原さん)「馬鹿にされることを恐れない」の一言に尽きると思います。起業に限らず地方で新しい取り組みを始めるには、周囲の目を気にせず、自分の信じる道を突き進む勇気が必要です。人と人との距離感や関係性が近い地方都市では、その良さが逆にマイナスになる面もあるのではないかと思います。東京の方が周りの目を気にせず自由にやっているはずで、そう考えると周囲を気にしている暇はなく、突き進んでいく必要があると思います。


編集後記
「馬鹿にされることを恐れない」と仰られた萩原さんの真っ直ぐで力強い眼力に、「闘魂一途」のチャレンジ精神と覚悟を感じました。その一方で、若手世代の意見に耳を傾け、自社の事業に積極的に取り入れていく柔軟な姿勢は、VUCAと言われる環境変化の多いこの時代を生き抜いていくために必要な姿勢であると感じます。この力強い覚悟と柔軟性のバランス感覚が、100年企業を支え、これからの100年に向かっていくために必要な姿勢なのだと理解することができました。
LANDとしても萩原さんの活動を応援していきます!
(LAND小田)


LINK

萩原建設工業株式会社ウェブサイト


協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


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