北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!
今回は、士幌町の道の駅「ピア21しほろ」を運営し、地域の活性化に取り組む株式会社at LOCAL代表、堀田悠希さんのビジョンとチャレンジに迫りました。ぜひご覧ください!
(聞き手:LAND小田)

株式会社at LOCAL 堀田 悠希さん

プロフィール
堀田 悠希さん(ほった ゆき) 代表取締役

中札内村出身。2016年に株式会社at LOCALを設立後、2017年から道の駅「ピア21しほろ」がリニューアルオープン、運営・管理を担う。また、2020年より士幌町商工会初の女性理事を務める。

「日本一、町民に必要とされる道の駅」を目指して


――株式会社 at LOCALの事業内容について教えてください。

(堀田さん)当社は、道の駅「ピア21しほろ」の運営、士幌町の地域資源を活用した商品開発、イベント企画、地域連携事業などを手掛けており、道の駅内では、「にじいろ食堂」「CAFÉ寛一」「PIA 21 SHOP」などの店舗を運営しています。「日本一、町民に必要とされる道の駅」のビジョンのもと、町の人々が気軽に集いやすいコミュニティをこの場所で作っていきたいと考えています。

――「日本一、町民に必要とされる道の駅」というビジョンが素敵ですね。

(堀田さん)ありがとうございます。会社の立ち上げ時から決めていたことなのですが、私たちは究極の黒子であるべきだと思っています。だからこそ、地元に愛され、地元に必要とされ、この士幌町にあって良かったと思ってもらえることが大事だと考えています。あくまで主役は町に住む人たちと生産者の皆さんであって、取り上げたいのはその営みや豊かさなんです。だからこそ、手がけている商品に当社のロゴマークは入れていません。そういった取り組みを続けてきた結果、商品開発に原料を供給していただいている生産者の方々とも一緒にものづくりをしているという連帯感が生まれてきましたし、イベントを行う際にも助けてくれるという関係性を築けてきたと考えています。

――「PIA 21 SHOP」では、バラエティ豊かでパッケージのかわいい商品が多く売っていることが魅力ですよね。

(堀田さん)必ずしも観光地とは言えない士幌町には土産物も決して多くはなかったため、オープン直後から自社ブランド商品の開発をスタートさせました。現在では50種類近くはあると思います。
 また、原材料の選定から価格設定に至るまで、お客さんがどんなものを求めているかを念頭に置いた「肌感マーケティング」を心がけています。例えば、商品開発に当たって通常は「地元農家で大豆が取れるからこれを作ろう」と考えると思うのですが、私の場合は、お客さんの動向を見る中で「この年齢層のお客さんだったら大福やかりんとうが受け入れられそうだな」とか「若いお客さんに対してはパッケージを柔らかく」と、お客さんの目線で考えることを大切にしています。商品の価格設定についても、お客さんの「お値頃感」を意識しています。
 そして、販売時に大事にしているのが、ただの商品としてではなくどんな料理に合うのかの提案を行っていることです。そして、お客さんがそれを食べてさらに新しいレシピを提案してくれることもあって、思いもよらないアイデアが生まれることで商品がどんどん広がっているんです。

とかち財団「令和2年度アーリーステージ事業者支援事業」を活用し、士幌高校の生徒や地元の農家と一緒に開発した「カボチャのピューレ」。パッケージのキャラクターが士幌高校の制服を着ているのが印象的。



人材育成と雇用創出で士幌の未来を拓く


――「ピア21しほろ」が地域経済・社会に与えている影響についてはどうお考えでしょうか?

(堀田さん)コロナの辛い時期もありましたが、年間30万人という来場者数が、どれだけ地域経済に寄与しているかは、正直測りきれないところもあります。
 そんな中で道の駅から士幌町の商店街につながる導線を作ろうと思い、「士幌まちなか見える化プロジェクト」を立ち上げました。初年度は、北海道大学と早稲田大学の学生さんが9ヶ月間にわたって士幌町の商店街25店舗を取材して周り、「しほろよってく?マップ」を作成しました。商店街の方からは「堀田さんの頑張りは知っていたけど、商店街のことまで考えてくれているなんて知らなかったよ」と嬉しい言葉をいただき、そこから新たな交流が生まれ、関係が深まったんです。この一件で町の人にも商店街を知ってもらうインナーブランディングの必要があると気づき、2年目は飲食店の店主さんの人柄や裏メニューを紹介する冊子「ミルシルしほろブック」を町民保存版として制作しました。

――事業規模も拡大していると伺いました。

(堀田さん)2023年度の売り上げは過去最高を記録しそうな勢いです。コロナでお客様が減った際に、ネット販売やふるさと納税など、新たな挑戦をいくつも打ち出しました。ただ、大事なのは、商店街とつなげる動きなども含めて、町民が「道の駅っていろいろなことをやっているよね」「羽田空港でピアの商品が売っていたよ」「マレーシアにも輸出しているんだってね」と私たちの活動を知ってもらうこと。そして、士幌町内外に商品を展開した結果がまわり回って地域経済への貢献につながると考えているんです。

――そうした挑戦の結果として、雇用の創出にもつながっているんですね。

(堀田さん)当社は社員の約半数が町外からの移住者で、現在は高校1年生から70歳代までのスタッフが在籍しているんですが、通常の採用面接ではなく、人づての紹介や、私がいいなと感じた人に声をかける方法を取っています。また、面接では私から特に多くを質問することはなく、むしろ会社のビジョン・ミッション・バリューについて私から深く説明する時間を大切にしています。これらに共感できる人と一緒に働きたいと考えているからです。

――今日は「ピア21しほろ」で取材をさせていただいていますが、スタッフの皆さんも生き生きと仕事をされているように見えます。これにはどのような工夫があるのでしょうか?

(堀田さん)当社では、特にコロナ禍において人材教育に多くの投資を行いました。スタッフの行動指針を策定し、それぞれの部署にはリーダーを置くと共にコンセプトを言語化し、しっかりと責任を持って運営してもらう体制を整えました。そのおかげで企業文化や理念が社員にしっかりと共有されたことが、組織としての大きな強みになっていると考えています。
 また、スタッフ一人ひとりのやりたいことに対して基本的には「ノー」とは言わず、サポートすることを心がけています。まずスタッフが企画書を書いて、町民に対してどのように貢献を行うのかをしっかりと計画してもらい、スタッフみんなの前でプレゼンをしてもらいます。そうやって、スタッフが少しずつでも新しいことにチャレンジしていくことができる環境を整えています。

スタッフの「やりたい」を叶えたいと願う一方で、その姿勢はあくまで「したたかに、失敗しないように」


――「ピア21しほろ」の今後の目標について教えていただけますでしょうか?

(堀田さん)私としては事業拡大を目標に据えるのではなく、今いるスタッフの「これをやりたい」「あれをやりたい」という想いを形にしていく中で、会社として着実にステップアップしていくことができると考えています。私たちの強みは、様々な人材を受け入れ、それぞれの強みを活かすことができることです。例えば、レコードが好きでコーヒーを入れるのが上手な人がいれば、焙煎所を作って彼に焙煎を任せ、私たちがそのコーヒーを買い取ったり、喫茶店を作ってそこを任せたりするのもいいでしょう。町のスナックを事業承継するということも考えられるかもしれません。
 そういった意味では結局のところ、私たちは“まちづくり”を手がけるチームでありたいと思っています。at LOCALはただの企業ではなく、スタッフの夢や目標を実現するための場所でもあるからです。

――堀田さんは20代で「ピア21しほろ」の運営を始めましたね。最近は若くして新たに事業を始める方が増えてきているように感じますが、堀田さんの取り組みはそういった方々のモデルケースになっているのではないかと考えます。最後に、そういったこれから事業を始められる方々に対してメッセージをお願いできますでしょうか?

(堀田さん)時には鈍感力も大切で、何かをやりたいと思ったら周囲からの批判や他人との比較を気にせず、自分の中で軸がブレないか、社会のためになるのか、自分の損得勘定だけで動いていなければ何をやってもいいと思います。ただ、私は勝算が8割あるような事業でないと始めるべきではないと思っています。「ピア21しほろ」の運営を始める際にも、旧道の駅がどれくらの事業規模であるかを調べたり、道路の前をどんな車がどれくらい走っているのかを調査して、売り上げがどれくらい立つかの計画を綿密に立てました。こういったことが心の安定剤になりますし、「したたかに、しなくてもよい失敗しないように」ということを常に心掛けていました。スタッフの「やりたい」を叶えてあげたいと願う一方で、毎日通帳を眺めるのも忘れずに心がけていきたいですね。

編集後記
堀田さんは、スタッフの想いを形にしていく中で会社をステップアップさせていく、それが結果として町民に必要とされる道の駅を作ることに繋がっていくというビジョンを描いています。その一方で、毎日通帳を眺めながらコスト計算や経理にも細かく気を配るといった、ある意味では泥臭くも経営者としては当然のリアリストとしての側面も強く有しているように感じます。
今回の取材では、堀田さんのしっかりと地に足を着けながらも理想の姿を目指す姿勢に、経営者としての「したたかさ」があるように感じられました。
LANDとしても堀田さんの活動を応援していきます!
(LAND小田)


LINK

道の駅ピア21しほろウェブサイト


協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


お問合せ

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